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□ラブ・スレイブ
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「どーしようかなー、これ。」
サクラは独り言を呟きながら、手に持つチケットをペラペラと振った。
そして何度見たか解らないカレンダーをもう一度見る。
1週間後の土曜日、そこには赤いペンで印がされている。
「任務だよねー、先生。」
サクラは大きく溜め息をつく。
折角の幸運が台無しだ。
サクラが手に持つチケットは、木の葉の里から程近い場所にある温泉のペア宿泊券である。
気紛れで応募した懸賞に当たった。
チケットが家に届いた瞬間、真っ先に恋人であるカカシと行きたいとサクラは思った。
そしてカカシは、任務のある日をカレンダーに書き込んでいることを知っていたので、カカシの家に来たのだった。
「ハァー。つまんないのー。」
ペアのチケットだから、いのやヒナタを誘ってもいいのだが、できるなら、カカシと行きたかった。
しかし任務ならば仕方がない。
「ただいまー。」
サクラがいろいろと考えていると、カカシが鍵を開けて帰ってきた。
「おかえり。」
「ん?何かあったの?」
サクラの声色がどこか暗いことに気付いたカカシが問い掛ける。
脚絆をほどくと、急いでサクラの顔を見た。やっぱり、少し沈んだ顔をしている。
「何でもないよ。」
ワガママは言わない。
カカシと付き合う上で、サクラが自分に対して決めた決まりごと。
14歳も年下の自分が、ワガママを言ったら、それだけでカカシを困らせてしまうと思う。
任務があるのに、旅行に行きたいと喚くのは、カカシに迷惑だ。
サクラはすぐに気持ちを整えて小さく笑った。
「んー。気になるんだけど。」
「せんせ、ご飯できてるよ。」
話題を変えようと、サクラは台所に向かった。
この話はもう終わりだ。
サクラの意志を汲み取ったのか、カカシももう何も言わなかった。
カカシは、手甲や額当てを外すと、ふとカレンダーを見やった。
「あ、そうだ。」
そう言うと、テーブルの上にあった赤いペンを手に取る。
ちょうどサクラがご飯を盛った茶碗をテーブルに置くところだった。
カカシは、ゆっくりとカレンダーに向かう。
「任務が一つなくなったんだよね。」
「え?」
カカシのその声に、サクラはパッと顔を上げた。
(まさか…まさかね。)
カカシがキュッと二重線を引く。
その日は…
「うそ!!土曜日!?」
「うん。アスマチームの助っ人頼まれてたんだけど、何かもう終わっちゃったみたいで。」
「やったー!!」
「え?」
カカシがカレンダーから目を離してサクラの方を向く。
そこには、満面の笑で何かのチケットを手に持つサクラがいた。
「先生!温泉!温泉いこ!!」
「へ?」
カカシは訳が分からず、サクラの方を見つめた。