書庫
□wisper
1ページ/8ページ
サクラは目の前の男に心の底から腹を立てていた。
「いい加減にしてよね!先生!!」
声を張って怒りを顕にする。当のカカシは、涼しい顔をして頭を掻いていた。
「俺は何もしてないよ。目の前でいきなりあの女が服脱ぎだして、ヤリたいって言ってきたんだ。」
カカシがウンザリしたようにそう言うと、サクラがわなわなと肩を震わせた。
昨日、サクラはカカシが非常階段で、「いかがわしいこと」をしている場面を目撃したのである。
しかも、サクラがいることに気付いても、カカシは女を責め立てることをやめなかった。
そしてサクラがそんな場面に出くわすのはこれが2回目だった。
「だからってアカデミーの非常階段であんなことする?それでも教師なの!?」
サクラがそう言った瞬間、カカシが教室の柱をバンッと叩いた。
空き教室に突然鳴り響いた大きな音に、サクラはビクッとなる。
カカシは、グッとサクラに顔を近付けた。タバコの匂いがサクラの鼻をくすぐる。
「そんな優等生みたいなこと言っちゃって。サクラ、ほんとはさ、えっちなこと考えてんだろ。」
サクラの顔がカアッと赤くなる。
しかし次の瞬間には、キッとカカシを睨み付けた。
「そんなわけない。この変態教師。」
冷静な声色でそう言うと、道を塞ぐように佇むカカシの体をドンッと押し、サクラは走って教室から出ていった。
サクラが去っていく足音を聞きながら、カカシはクスリと笑った。
サクラは怒り心頭だった。
ズンズンとアカデミーの廊下を歩く。
「信じらんない…あんなこと言って!」
先ほどカカシに言われたセリフが、頭の中で何度もリフレインしていた。
“ほんとはえっちなこと考えてるんじゃないの?”
「…カカシ先生にだけは言われたくないわよ!バカッ!」
周りの視線も気にせず、サクラは大声でそう言った。
なぜここまで頭に来るのか、サクラには解っていた。図星だからである。
サクラは、初めてカカシと女の情事を目撃した3週間前から、カカシのするセックスが気になって仕方がなかった。
その日たまたま放課後のアカデミーの巡回を任されていたサクラは、空き教室で女を抱くカカシを見つけた。
カカシは、いつもの優しい教師の顔とは違い、大人の男の顔をしていた。
それ以来サクラは、「巡回」を毎日している。
元々アカデミーの巡回係は、イルカだったのだが、サクラから自分がやるとイルカに申し出たのだった。
「…。」
ふと、足が止まる。
カカシに自分の心を見透かされたかと思うと、サクラは複雑な気持ちになっていた。