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□フリー・カクテル
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カカシ先生は、わたしのことが好きだ。
付き合ってるんだから、そんなことはわざわざ言葉にしなくても、「暗黙の了解」とかいうので保証されている。

そんなことは解ってる。
でも言葉がないと、何でかは解らないけど、全てが夢なんじゃないかってくらい不安になる。

カカシ先生がわたしと付き合ってるだなんて。
もう半年も経つけど、全然信じられない。

カカシ先生がわたしを好きだなんて。
カカシ先生がわたしとセックスをするなんて。
カカシ先生がわたしの髪の毛を撫でてくれるなんて。

全部どこか怪しい。
何かが偽物に思える。

原因は解っている。

言葉がないから。

「サクラ。」

服を着なさい。風邪引くから。
と優しい声が上から降ってきた。
窓の外には、大きな月。
わたしは、うん、と小さく答えながらその月をぼんやりと眺めた。

「…着ないと、また襲いたくなる。」

ボスッと服を背中に投げられた。
カカシ先生の声は、妙に真剣だった。
顔を見なくても解る、カカシ先生の気持ち。

こんなに通じ合ってるのに。
顔を見なくても全てが解るくらい、何もかも通じ合ってるのに。
どうして言葉のない虚しさを感じてしまうのだろう。
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