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□夢浮橋
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「それはお前がロリコンだからって話じゃなくて?」「ばか。違うよ。サクラ以外のあのくらいの女の子に興味ない。」
どうせ付き合うなら、そしてセックスするなら、20代のそれなりの女の方がいい。カカシはそういう考えを持っていた。
だから、サクラと付き合ったとき、一番驚いていたのはカカシ自身なのである。
「初めてエロより、気持ちで付き合いたいと思ったの。」
「…お前、よくそんな恥ずかしいことが言えるな。」
アスマはアハハと笑いながら、ビールを飲み干し、久保田、と小さく日本酒を注文した。
「アスマも同じくせに。」「…うるせーな。」
今度はカカシがアスマをからかう番だった。
カカシはふと自分の左腕に血がついていることに気付いた。
「…。」
さっきまで就いていた任務のときについたものだろう。
カカシは、グラスについた水滴を指にとり、その血を溶かして拭き取った。
「サクラと付き合ってから、劇的に変わったことがあるよ。」
「ん?」
アスマがカカシの顔を見る。
「死にたくないって思うようになった。」
カカシはそう言うと、小さく笑った。
「…男って考えることみんな同じなのな。」
大きく息を吐きながら、アスマも自嘲するように笑った。
アスマは、また指輪をさする。
明日には、またAランク任務が待っている。
アスマもカカシも、いつ死ぬとも解らない場所へ向かうのである。
「あいよ、久保田。」
店員が久保田の入ったグラスをアスマの前に置いた。
酒の匂いが頭の中に染み透る。
カカシはゆっくりと目を閉じた。
愛する人が瞼の裏に浮かび、それだけで安心して明日に向かえる気がした。
end.