書庫

□カテーテル
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家に帰ると、脚絆をほどき、忍服を脱ぐ。
上半身裸のまま、ドサッとベッドに横たわった。

無性に疲れた。

「ハァ…。」

眠って意識を飛ばすのが一番いいのだが、全く眠気が来ない。

「荒んでんなー。我ながら。」

独り言が部屋の空気に溶ける。こんなことならさっきの女と、ああなる前にヤっておけばよかった。
セックスをしたら、嫌でも眠くなっただろう。

やれやれと着替えのシャツを探していたときだった。
コンコン。

ドアをノックする音が聞こえた。
夜の10時だぞ。一体誰だ。

「どなたですか?」

ダルい体を起こしながら、ドアの方に向かう。

「せーんーせー!」

ん?

ガチャッとドアを開けると、予想通りの声の主が立っていた。

「キャーッ!」

俺の姿を見るなり、サクラが小さく悲鳴を上げた。

「え?あ、ごめん。」

そうだ、上着てないんだった。
急いでシャツを被る。
その間サクラは、俺から目を反らしていた。

「で、どうしたの。こんな時間に。」
「先生、これ忘れ物!」

サクラは、ズイと俺に袋を差し出した。
中を覗くと、そこには巻き物が入っていた。

「あ。」
「この巻き物、先生がいつも持ち歩いているものだよね?」

全くサクラの言う通りだ。任務のときは必ず忍服のポーチに入れる、相棒のような巻き物。
こんな大事なものをどっかに忘れたっていうのか、俺は。

「アカデミーの仮眠室に置いてあったわよ。」

不用心なんだから、と言いながら、サクラが呆れている。
こりゃ、呆れられて当然だな。
確か…仮眠室でヤったときにゴツゴツして邪魔だったから出して置いたんだ。
記憶が次第に蘇ってきた。

「先生、ダメだよー。大事なものなんでしょ。」

顔を少し赤らめながら、サクラが俺を叱った。
俺の心の中に、次第に淀みが出来始める。

「先生、聞いてる?」

抗議するサクラの顔をじっと見つめる。まずは視線を送ることが大切だ。

「な、何?どうかした?」

ほーらね、戸惑ってる。サクラも、女ってことだよね。
教え子に欲情するなんて、俺もいよいよ狂ってるなと思うけど。

「上がってけば?届けてくれたお礼に、お茶飲んでってよ。」

そう言ってニッコリと笑った。

「…うん。」

ほーらね。
サクラはゆっくりと玄関に上がった。これで準備は整った。
あとはキスして、ベッドまで促すだけ。何て簡単なんだろう、セックスって。

サクラの背中で、バタンとドアが締まる音がした。
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