小説(オリジナル&二次創作)

□TOH小説 
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『自分が思うより』

「蛇影裂襲顎!!」
クンツァイトの四本の腕が、敵を裂いた。
血が飛び散り、肉が舞う。
「・・・・・・・ぐぅ・・・」
ソーマの腕を納めた時、クンツァイトは横の腹を押えて傾いた。
「大丈夫かよ!」
倒れかかったクンツァイトを支えたのはヒスイだった。
クンツァイトを近くの木の根元へ座らせ、腹を押える手を退ける。
「ひでぇ傷じゃねぇか!なんで言わねぇんだよ!」
服を破き、内部機関を露出させているその傷は、いくつかの機関を傷めてしまっているようだ。
「・・・・これぐらい・・・・うっ」
苦しげに顔を歪めるクンツァイトを見て、ヒスイを口を尖らせながら言った。
「今、回復してやるから動くんじゃねぇぞ」
「キュア」とヒスイが唱え、クンツァイトの傷がみるみる塞がっていく。
破れた服までは治せないが、内部機関と裂けた外壁(皮膚)は元に戻った。
「ちっ・・・。こんな時間に散歩なんかするんじゃなかったぜ」
ヒスイは舌打ちして背を向けた。
「・・・・・何故ついて来た」
クンツァイトは木に手をついて立ち上がる。
「野宿してんのに、こんな所で散歩しようとするお前の方がおかしいだろーが」
ヒスイは悪態をつき、側の石ころを蹴り上げた。
蹴られた石は、空を舞って木に当たった。
「・・・・自分の問題であるため、解答を拒否する」
転がる石を少し目で追いながら、クンツァイトは静かに言った。
その声に、先ほどの苦痛の色はカケラもない。
「けっ、そんな事まで秘密事項か?意味わかんねー」
そんなクンツァイトを「強いな」と思いながらも、ヒスイは荒く答えた。
「・・・・・・」
クンツァイトは黙り込む。
(言い過ぎたか?)
少し不安になったヒスイは振り向いた。
「おい――――」
クンツァイトは、空を見上げていた。
空には、『白化』された結晶界である白い月と、スピリアを吸い尽くす魔物である黒い月が浮かんでいる。
クンツァイトの目は、何を見ているのだろう?
「・・・・時々、自分のスピリアはエラーを起こすのだ」
口調にはなんの変わりもなかったが、目は少し不安を帯びていた。
「エラー?問題か?」
ヒスイも同じように空を見上げた。
真っ黒な絵の具をこぼしたような黒い空に、沢山の星が浮かんでいる。
とても綺麗だが、全てが儚く見えた。
「・・・・肯定。自分は思ってしまうのだ。いつか、我等機械人と原界人が分かり合える日が来るのではないかと・・・・・」
「は?何言ってんだよ」
ヒスイは目を戻し、クンツァイトの胸をドンと叩いた。
「もう解りあえてんだろ?お前は、俺等の仲間なんだよ」
クンツァイトはちょっとだけ驚いたような顔をしたが、ほぼ無表情に近いと言っていいだろう。
だが、一瞬だけクンツァイトの表情がやわらかくなり、微笑んだようにも見えた。
「・・・・仲間・・・・・」
ヒスイに小突かれた胸を押え、クンツァイトは静かに呟いた。
「そういうこった。お前の考えていることは、人によっちゃもう叶っているんだよ」
ただ、とヒスイの顔が陰る。
「インカローズとかにはわかんねぇだろうな。アイツは、かわいそうな奴だ」
「かわいそう・・・・・」
「あぁ。寂しいんだろうな、アイツは。クリードの野郎はインカローズなんかにこれっぽっちの興味もない。
それでも、アイツはアイツなりにクリードに尽くしてんだろうな。利用されるだけでも」
クンツァイトは、再起動する前の―――ヒスイたちに出会う前の自分を思い出した。
スピリアの中にあったあの冷たく暗い気持ちは、きっとヒスイの言う「寂しい」なのだろう。
(もう自分は・・・・・・「寂しい」訳ではないのだな)
ヒスイは、笑って言った。
「お前が思うよりずっと、お前は寂しくなんかないはずだぜ。早く気づけよな」
ヒスイはさっさと走っていった。
再び、クンツァイトは空を見上げる。
「・・・・・ありがとう、ヒスイ・・・」

              終わり
―――
何が言いたかったのか不明。サークルでUPしたのを持ってきました。
ヒスクンを目指したけど、これでいいのかな・・・・?

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