小説(オリジナル&二次創作)
□約束 ―Song of far day―
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Prologue 冷たい碧眼
―今度はどんなところなのか。
少年は、山道を歩いていた。
街の人々に忘れ去られた、ルア国北部の果てにあるリアナ村へ行くためだった。
先ほどまで全く見えていなかった村が、生い茂った木の中に少しずつ見えてきた。
家々がいくつかはっきりとわかるようになったとき、少年は何かに気づき足を止めた。
―この殺気、まさか―?
しかし少年は1人で首を振ると、再び歩き出した。
まさか、そんなはずがない。
心の中で呟き、再び黙々と音もなく歩いた。
そして少年は、リアナ村に着いた。
今、少年の前にはナイフや弓を構えた数人の村人がいる。
少年はその村人を驚くこともなく、脅えた様子でもなく、ただ単に青い瞳で見つめていた。
その顔に表情はなかった。
少年は何も言わなかった。無言で村人たちの言葉を待った。
村人は少年の反応に少し驚いた様子だった。
少しして、1番前にいた男がひとり短剣を納め尋ねた。
「こんな寂れた村に何の用だ」
「街から引っ越してきました」
少年の声は誰もが身震いしたくなるほど恐ろしく冷徹で、感情のかけらをも感じられなかった。
家の影から女が恐る恐るこちらをのぞいている。
少年がそれに気づいて視線を送った途端、女は顔を恐怖に引きつらせ家へと逃げ込んだ。
「・・奥に空き家がある。そこに住むといいだろう。2階建てのボロ屋だ」
先ほどの男が静かに言った。
「ありがとうございます」
抑揚のない口調で礼を言うと、少年は歩き出した。
男たちの表情は硬い。皆武器を納めることなく少年をじっと見つめていた。
ごく自然に少年が歩くと、男たちはさっと身を引いた。見えない圧力が体をものすごい力で押している気がして。
少年はそんな村人を気にするわけでもなく、やがて村の奥に消えた。
「なんなんだ、あいつは・・?」
ひとりが、脅えたように呟いた。