万葉恋歌

□秘密の恋
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今日は雨。




しかもとびっきりの土砂降りの雨。
俺は、長い長い溜め息を大きめにつきながら隊服に腕を通した。
今日は見回り当番であり、しかも一緒に行くのは土方さん。
これでもかと言うぐらいすでに嫌気がさしているのに、雨の日のみ必ず姿を現す相手を思い出せばいくら総悟とは言え溜め息の一つや二つ、つきたくもなるだろう。

別に雨限定で会いにくるあいつは嫌いじゃない。むしろ恋人であって好きなのに…
どこか自分をからかうような、試してくるようなあの笑みが、我慢ならないのだ。




沖田 「身長同じなくせにねィ…」


餓鬼っぽい言葉で悪態をつきつつも、腰に鞘に収まっている刀をさせば自室からでていった。





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土方 「たく、なんでこんな土砂降りの中見回りなんざしなきゃなんねェんだ」
沖田 「なんでィ、土方さん。水臭いじゃねェですかィ。言ってくれれば俺一人で見回りしてきたのに」
土方 「てめェはサボりたいだけだろうがっっ!!!」



いつものやり取りを土方コノヤローとしながらも、俺は祈った。どうかどうか今日だけは会いませんように、と。
が…
その瞬間目の前を横切る桃色頭。
俺は一瞬でその髪の主がわかれば、必然的に思考回路は遮断されて直立不動。


土方 「あ?お、おい…総悟?」
沖田 「へ、あ…なんですかィ?土方さんは最近の流行りにもついていけないんだねィ…最近若者の間で流行ってるんですぜィ?」
土方 「…てめぇ…なんか変なもんでも食ったか?」


油断してたから土方さんの問いに吃ってしまったではないか。
必死でいつものように返そうとしても、この男にはバレバレ…
しかし、俺は自分でもわからないぐらい目は無意識に先程目の前を通った桃色頭を探す。
ばれたら仕事柄厄介なのは重々承知してるはずなのに、やはり好きな者を目の前にしたら探さずにはいられない。



土方 「おいっ…具合悪いんだったら先に屯所帰ってろ。」
沖田 「大丈夫でさァ…ッ!!!」




土方さんに声をかけられれば我にかえり、慌てて土方さんの方に視線をやるが、再び視界に入ってきた桃色頭。
今度は距離はあるものの、俺があいつと判断にするのに困らない距離であった。



しかもあいつ、いつもと違うおろされた髪をゆらゆらと左右に揺らし可愛らしいくニコニコと笑いながら、口パクで"待ってる"、だって…ずるすぎる。
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