【夢語り】
□黒服のかまいたち 第六章〜彼方に響きし笛の音は〜
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深い水底を漂っていた意識が浮上する。瞼をゆっくりと開き、天井から差し込んでくる光にその碧の双眸を細めた。
強張ってしまった筋肉をほぐすように、時間をかけて上半身を起こす。
眠りを妨げるものは何だ?
深い闇の底から自分を引き戻したその強い力は?
行かなければならないと、本能と呼ばれるところが告げている。理由などどうでもいい。ただ、行かなければ。
呼ばれた、気がしたから。
「あの子が…」
大切なあの子の身に、何かあったのだ。
でなければ、自分が目覚めるはずがない。
「…時が、来たのか…」
悲しげに呟き、彼は立ち上がる。
天井を仰ぎ、備えられた窓から暗い室内へと差し込む陽の光に、もう一度その碧の双眸を細めた。
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