【夢語り】
□黒服のかまいたち 第九章〜嘆きの声は翡翠に消えて〜
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『叉鸞(しゃらん)』と、言うの?
綺麗な名前ね、と。
そう言って笑ったお前の笑顔の方が綺麗だと、思った。
『叉鸞』―――それは、種族の名。
君の名前は?
名など持たなかった。
自分達を束ねる翁は気まぐれに各々の毛の色で呼び分けていたが、特定の誰かに心を寄せる事などなかったから、個体を示す名など必要なかった。
じゃあ、名前をあげる。君は――――。
あの日から、彼女の呼ぶその名前が、自分の『名』になったのだ。
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