合わせ鏡

□一難去ってまた一難!
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「きゃあああああ〜〜〜っっ!!
誰か、来て〜!
竜人よ〜!!」

ザイの魔法によって一行がイシュタルの町に着いた途端、たまたま傍を通りがかった女性の絶叫が町中に響き渡った。



「えっ?竜人?
あ、アーサーのことか?
いや、こいつはな…」

女性のさらなる絶叫が、アーロンの説明を遮った。
その声によって、どやどやと町の人々が集まって来る。



「とにかく、ここにいるのはまずい!
町の外まで走るぞ!」

一行は町の外に向かって全速力で駆け出した。









「どうやら大丈夫そうだぜ。」

町のはずれの林の中から顔を出したアーロンがあたりをうかがう。



「それにしてもしくじったな。
アーサーをこのまま町に連れて行くのは、少々無理があったようだな。」

「すみません。
私のせいで、皆さんにご迷惑をおかけして…」

「あんたのせいじゃないさ。
それより、グレゴラスの町までどうやって行くか…だよな。
おい、アーロン!
あそこの家からなんか役に立ちそうなものをかっぱらって来い!」

ザイは事も無げにそう言いつけると、一軒の民家を指差した。



「な、なんで俺が泥棒やらなきゃなんないんだよ!」

「この中で泥棒っていったらおまえしかいないだろう?!」

「な、な、な………!!」

子供のような言い争いをしながら、ザイとアーロンの鬼ごっこが繰り広げられる中、きっぱりとした態度でリシャールが手を挙げた。



「私が行って参りましょう!」

「え…?!」

喧嘩も忘れ、リシャールの顔をみつめるザイとアーロン…
そんな二人には目もくれず、リシャールは民家に向かって駆け出して行った。







「良いものがありましたよ〜!」

しばらくした後、リシャールが手を振りながら戻って来た。



「はい、どうぞ!」

リシャールがアーサーに差し出したのは、フードの付いた黒いマントだった。



「ちょっと失礼しますよ。」

リシャールは、ネッカチーフでアーサーの口許を覆い、さらにマントを着せフードをかぶせた。



「おっ!これなら大丈夫そうだな!」

「出来るだけ暗くなってから移動すれば問題ないな。」

「ありがとうございます、リシャールさん。」

くぐもった声でアーサーが礼を述べる。



「しかし、あんたが泥棒まで出来るとは意外だったな!」

「ぶ、無礼な!
ビアンキ家の跡取りである私がそのようなことをするはずがないでしょう。
これは対価を支払い、正統に受け取ったものです。」

「えっ、そうだったのか!
それで、一体何を?」

「ルビーを二つ程…」

リシャールは宝石を抜き取った剣の鞘を差し出した。



「ええええーーーーーっっ!」



マントとネッカチーフにルビーを二つ…
三人の絶叫が、林の中に木霊した…


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