【夢語り】
□黒服のかまいたち 第二章〜痛みも全て忘るるは〜
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木々の間を吹き抜ける風が冷たい。睦月に入ったこの森の冬の本番はこれからだが、曇った空からは細かい雪が舞い始めていた。
「今日中にこの森を抜けるのは無理そうね…」
白い花が舞い落ちる空を忌々しそうに睨め上げ、歩みを止める。後ろを振り返れば、昨日までに積もった雪の道には彼女以外の足跡は刻まれていない。その事に何となく不安を感じ、視線を前方に戻して再び歩き始める。
光が差し込まない薄暗い森の中を歩くその歩調には全くの乱れがない。不規則に突き出ている木々の根に時折を足を取られることはあるものの、足を止める程の障害にはならない。
「…貴女は今、生きているのよね?」
森の中をひたすら歩き続けながら、彼女は誰にともなく問いかけた。
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