Gift novel.01

□自己満足の氷像
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「俺は何も要らなかったのに」



彼はただそう言って
何もかもを拒絶したような、からっぽの琥珀をこちらに向けた



「余計なモノなんて要らなかったのに

・・・・ねぇ、リボーン
俺はこんなもの要らなかったんだよ?」



綱吉は口の端だけを上げた微かな笑みを浮かべると
目の前に居る黒衣の死神に見せ付けるように
ジャラジャラとその手に乗せた
後継者とその守護者の証であるリングを掌の上で転がす


カチカチとお互いがぶつかる音をたてながなら
七つの指輪は美しい炎を纏っていた



「俺は指輪も守護者も要らなかった」



「・・・・あぁ」



「逆に護らなきゃならない様な奴、要らなかった」



「・・・・」



俺は何も言えずに黙り込んだ


(気付かなかった気付けなかった気付こうとしなかった)


(こいつのコトを何一つ理解なんかしていなかった)



「ダメツナのままでよかったのに」



綱吉は何も言わないリボーンを気にも止めずに
見下すような、蔑むような目で
自身の掌で転がる指輪を見る



そしてわざとらしい所作で溜息を吐くと
それまで座っていた執務用の椅子から立ち上がり
リボーンの座るソファまで歩み寄って
丁度向かいに置いてあるソファに腰を下ろした



「誰も近寄らない、誰も気にしない
ダメツナを望んでたのにね

お前がダメツナを殺したんだ」



チェシャ猫の様に愉快そうに歪んだ彼の口



(あぁ、分かってるさ
困ったようにはにかんで笑うあいつは・・・・)


ダメツナと言う仮面はもう俺が剥がして殺してしまった


(どうやったってもう償うことなんて出来ないけどな・・・・)



綱吉はじっと自分と合わさないリボーンの漆黒の瞳を見てみたが
不意にその冷たい琥珀に喜色にも似た
(けれどソレとは決定的に何かが違う)色を浮かべた




「ねぇ、何ソレ
償い?そんな馬鹿馬鹿しいモノ要らないよ

だってそんなの、お前が救われたいだけなんだろ?」



こてんと首を傾げて、幼い仕草で不思議そうに
ダメツナの様に言った綱吉に
その口から吐かれた言葉に、目眩がした



(目の前の琥珀には俺の考えを読むことなんて容易いのだと

そして言い放たれた言葉は暴かれたくなかった
自己満足な俺の本心に違いなかった)





「今のお前なら俺は護る必要なんて無いよね
俺はそんな守護者がよかった

償いたいが欲しいんだったら」



「お前が俺の守護者になればいい」



甘い甘い断罪の言葉に
目の前の琥珀に手か伸びそうになる



「俺は・・・・」



口を開いたところで足元に違和感を感じた

ヒヤリとした冷気にふと下を見れば
先程まで主人の掌で転がっていた指輪が
冷たい氷に包まれて転がっていた



(あぁ、そうだこいつは・・・・)



「・・・・リボーン?」



綱吉が動きが止まった俺に不思議そうに問い掛ける
その口元には鮮やかな笑み


(そうだ、こいつは)



「お前はそうやって逃げた奴を捨てるんだろ」



足元に転がった凍り付けの指輪が
いくら視界に入れない様にしても嫌でも目につく気がした

目を逸らすな、逃げるな、とでも言うような




「正解」



冷たく響いた愉快そうな声に
今は居ない・・・・俺が殺した偽りの彼を
思い出して胸が痛んだ



(お前はきっとそれも
自己満足の浪費だと笑うだろうけれど)









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