Gift novel.01

□眠る王
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『そんなにボンゴレが大切?』



そのボンゴレを統べる若く美しい王にそう問い掛けた事がある

ひどく細く白い王は、それでもその目は強い意志が込められていて
纏う空気は支配者のものだった


その彼に再度問い掛けた



『ボンゴレっていう組織が大切なの?』



その王は問い掛けに対して微笑んだ
そうして言ったのだ



『俺が大切なのは、伝統や地位なんかじゃないんだ』



心底、心底愛しそうに
見たこともない様な優しい顔で



『俺の傍に居てくれるボンゴレの皆が大切なんだよ』



その言葉を聞いて、確かに表面上は変わらない笑顔を貼りつけていたけど
押さえられない位の殺意が自分の中で生まれた

目の前の彼へ、ではなく
彼の周りに集るボンゴレに群れる蝿共に

















見晴らしのいい広い部屋にたった一つだけ置かれた
そのとても凝った造りのベッドには一人の青年が横たわっていた

光に透かすと金色に光る髪、琥珀色の瞳は閉じられて見ることはかなわない

こんこんと眠り続ける彼は長い夢からまだ戻ってこない
死んではいないが植物人間、に近い状態にあった



その彼が眠るベッドに座るもう一つの影が
そっとそっと見た目より随分柔らかい茶色の髪を指に絡めた



「綱ちゃんの周りの蝿がね、邪魔なんだ
だから壊したかったんだよ」



「ねぇ、綱ちゃん」



どれだけ愛しさを込めて名前を呼んでも
呼び掛けてももう返事は返ってこない
白い頬に触れても反応は無い


それが淋しいと思う権利なんて無い



(嗚呼どうしてこんな)



「ただ綱ちゃんだけが欲しかったんだよ
他は要らない」



(なのになのになのに)



血の気の失せた唇にキスを落としても暖かさも感じない
ひやりとした感触が苦しい





邪魔で邪魔で仕方がなかった
ボンゴレが、彼の周りが

だから壊そうと思った
じわじわと遠くから、彼の周りから殺して消していった



計算違いは下っぱの構成員なんかを庇って
ボンゴレの王が代わりに銃弾を浴びたこと
それから彼が目覚めないこと


騒ぎの中でなんとか奪ったお姫様は目覚めない





(あんな奴に庇う価値が?)



そんなことは認めない



(なんでそんな大切にするの)



だって知ってる
彼があんなに細いのはその肩に重すぎる責任を押しつけられた心労と
その立場からの激務が原因

彼が大切だというファミリーも
最初嫌がった彼に無理矢理押しつけられたモノで



(なのに)



沸き上がる黒い感情をもう押さえられそうにない

憎い憎い憎いボンゴレが憎い



握り締めたシーツと彼の青白い顔が目に入った

自覚はある
きっと今俺の目には狂気しか映っていない

だってそうだ綱ちゃんを失ったら俺は



(嗚呼、そうだ)



(もし綱ちゃんが死んだら後を追う前に全部壊してしまおうか)



王が兵を愛し守り庇い死んでしまったのに
愛され、護るべき存在でありながら護られた兵が
のうのうと次の王をたて、その王に従うなんてこと



「許されないでしょ」



そういって彼は愉快そうに口を歪め
眠り続ける王の髪を撫でた








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