novel.01

□10年後からの客人 中
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綱吉さんがこちらにきて一週間が経った。

すでにこちらに馴染んでいる彼の適応能力がすごいとは思っていたが、
今の状況は勘弁してほしい。


そう言えば、と数日前の会話を思い出した。



「はぁぁ」



「どーした?」



俺がため息を吐くと綱吉さんが話し掛けてきた



「もうすぐ授業参観があるんですよ・・・・」



憂欝だ。とまたため息を吐くと、
綱吉さんは苦笑して俺の頭を撫でてくれた。

俺は実は彼の手が好きだったりする



「今回はきっと何時もと違うから、そんなに心配するなツナ。」



「綱吉さん・・・・」



彼に慰めてもらえると何故だかとても嬉しい。



「なぁ、ツナ」



「はい?」



「前々から思ってたんだけど、人前で呼ぶとき『綱吉さん』は困るよな?」



「はぁ・・・・」



確かにそうだがそれ以外の呼び方なんて浮かばない。



「それじゃお互い困るから
人前の時は俺のこと『光友(ミツトモ)』って呼んでくれないか?」



「へ?」



「二人っきりの時はなんて呼んでもいいから・・・・」



不意に耳元で囁かれた俺は真っ赤になって首をぶんぶんと上下に振ることか出来なかった。





あの時の『今回はきっと何時もと違う』はこのことだったんですね綱吉さん・・・・




授業が始まる前の休み時間、何時ものように山本や獄寺くんと話をしていた。

周りも何時もより騒がしい。
「今日は誰が来る」だの
「家は誰も来ない」だの・・・・
そう、今日は授業参観の日なのだ。



「山本の家は誰か来るの?」



「親父が来るとか言ってたなぁ、ツナは?」



「たぶん母さんが」



(獄寺君は・・・・)



「ビアンキは?」



大丈夫なの?と聞くと獄寺君は



「なんとか説得しました・・・・」



と目を逸らして言った。


話している途中で何人かの保護者が教室に入ってきたらしい。

また三人で話しているといきなり教室が騒つきだした。

今度は「外人?!」だの
「格好いい〜」だの
「誰の知り合い?!」だの女子の声が聞こえてくる。
嫌な予感がする。
普段なら気にしないのだが、そっと振り替えると、

黒のパンツに灰色のシャツといった服装(ラフだがとても似合っていた)の綱吉さんが俺に気付き、それはもう、眩しいくらいの笑顔で笑いかけていた。


まぁその笑顔はさらに女子の黄色い声を煽るには十分なモノだった。
(女子はおろか獄寺君や山本まで赤面していたし。)それが俺に向けられたものだと解ると女子もこちらに意識を向けるワケで、
にこにこと控えめに手まで振られれば、決定打なワケで・・・・

はい、質問攻めカウントダウン開始・・・・とこちらに寄ってくる女子に覚悟を決めていたら、運良く授業開始のチャイムが鳴って担当教師が入ってきたのだった。





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