novel.01

□プリンセス
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「あ、勿体ない」



書類の紙が指に作った紅い切り傷に気付きそうこぼしたのは、
仕事の報告に来ていた多分誰よりもその台詞が似合わない彼



「何が?」



二人しか居ないボスの執務室で呟かれた言葉は椅子に座っていた部屋の主人の耳に届いていた



「ソレ」



指差した先にあったのは先程作った傷に書類、そして指先の紅い水滴



「はいはい、折角作った書類を汚してすまなかったね」



ひらひらと書類を揺らしてやれば、金色の前髪で目が隠れたその顔が迫ってきた



「ちがうよ」



座っている綱吉に目線を合わせて腰を曲げて覗き込んでくる
ニヤリと口を歪ませて笑うのは何時もの事


椅子に座る綱吉はそれに反応するでもなく



「じゃあ何?」



と一言発し妖艶に笑った



「アンタが血を流すのは勿体ない」



「可笑しい事を言うんだね、プリンス・ザ・リッパー?」



くすくすと目を細めて笑えばまたベルフェゴールの顔が近づく



「僕達の血は特別なんだよ」



すっと流れる様な動作で綱吉の手を取り、口付けを落とす



「なかなか様になるんだね、王子様」



「だろ?」



すっと手を持ち上げ、紅い水滴の付いた指先を舐めた
ピチャ、と濡れた音が執務室に響く



「今度は吸血鬼?」



「じゃあ綱吉は姫だね」



「馬鹿馬鹿しい・・・・」



くすくすと笑う愛しい姫

でも姫は暗いお城(執務室)に籠もったきり、絵本(書類)を読むのに忙しい
外に出ても人形達(敵)を相手に玩具(銃)片手に遊ぶ(戦う)ばかり

王子様にも吸血鬼にも心を動かしてくれない



「残酷な俺のお姫様」



そう言って唇を合わせる
拒みはしないと知ってるから
好きな様にさせてもらう










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