novel.01

□午後の悪戯
1ページ/1ページ






暖かな彼の執務室のソファで
彼が来るまで待っていようとしたら
部屋に染みた微かな微かな彼の匂いや気配に
安心してしまって何時の間にか寝てしまった






「マーモン・・・・」



僕の名前を優しく呼ぶ声がする



「・・・・マーモン?」



今度は躊躇いがちに


(ああ、こんなふうに僕を呼んでくるのは君だけ)



「・・・・マーモン・・・・」



優しく僕の名前を呼ぶ声が心地良くて
僕は未だ彼の執務室のふかふかのソファで寝たふりを続ける


(起きてしまうのが、何だかとっても勿体ない気がするんだ)



本当は起きているけど、何時までも目覚めない僕に
しょうがないな、と苦笑混じりの小さな声が聞こえた

それからきしり、とソファが少し沈んで
隣に彼の気配がした


この座り心地の良い大きなソファは
悔しいけど成長途中なまだまだ小さい僕と
小柄な彼が並んで座るのなんて余裕で

わざわざ詰めなくても十分スペースがあるのに
綱吉は僕が前に一回、隣に座って、と言ったのを
ずっと覚えて必ず隣に座ってくれる


そんな事が嬉しくてしょうがないくらい
彼より小さい体や、遅い成長が腹立たしくて
彼のまわりの奴全員に嫉妬してしまうくらい
綱吉の事が好きなんだ



隣に感じる彼の気配に幸せな気分になる自分
きっと彼と出会う前なら
他人の横で安心するなんてなかったのに


そんな事を考えていると
くすくすと笑う声が聞こえる
すぐに頭に彼の手が乗せられて
フードごしに頭を撫でられた



「何時まで寝たふりしてるつもりなのさ」



綱吉がくすくすと笑いながら僕の頭を撫でる



「ばれてたか」



すぐに寝たふりを止めてくるりと彼を仰ぎ見た

可笑しそうに笑って僕の頭を撫でていた手が退けられる



(ほら、勿体ない)



まだ起きなければよかったな、と
思ってしまうのは仕方がない事だ


(だって綱吉はいつも皆に囲まれていて
二人きりで過ごせるなんて稀なことだしね)



「マーモン、なに拗ねてるのさ」



その声に上を向けば
苦笑している綱吉の顔がある



「拗ねてなんかないよ」



「拗ねてるよ」



そう言って綱吉は僕の体を軽がる持ち上げると
自分の膝の上に下ろして
後ろから抱き締める



「マーモンは可愛いね」



「ム・・・・」



「仕事で中々会えないから寂しいよ」



「・・・・」



そんな事言われたら
仕事なんか放り出して会いにきたくなるじゃないか



綱吉はどうしたの?何て言って笑いながら
僕の顔を覗き込んでくる


(絶対確信犯だ)



僕だけ余裕が無いたいで、それが気にくわなくて

思いっきり服を引っ張って、不意打ちにキス



真っ赤になって黙り込んだ綱吉を見て
綱吉が混乱している間に部屋から逃亡した



「〜〜〜マーモンっ!!」



背後から聞こえてきた大声で自分の名前を呼んだ
まだ赤く顔を染めている彼に


口元が緩むのを押さえられなかった



(たまには綱吉も僕のことで頭を一杯にしてくれてもいいでしょう?)








.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ