novel.02

□飛べない鳥
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澄んだオレンジの炎
それは他の誰でもない、君だけの色だった



(僕はあの炎が好きだった)



彼がゆらゆらと揺れる炎を纏って戦う姿を見ると
とてもワクワクした



(けれど君は何時も目の前の何かを睨み付けるみたいに目を細めて
眉を寄せて、唇を噛んで
何時も何かを耐えるよう拳をふるっていた)



彼は、大空だった
(全てを包括してそこに居た)
そうであることを半ば強いられて
(それは本当に君が望んだことだったのだろうか)
けれど最後まで君らしくあった
(そう、最後の最後まで)



君は死んだ

罠だなんて分かり切っていたくせに
君には全て分かっていたくせに
超直感?人の機嫌を探るときには使っておいて
肝心なときに君はそれを無視したじゃないか



困ったように笑って、譲らなかったのは君でしょう
僕には行ってきますの一言だけしか残さなかったくせに
ただいま、すら言ってくれなかったじゃないか

銃で射たれて終わりなんて
そんなの許さない
(君はそんなに弱くないのに)
そんなの認めない
(君は帰ってこなければいけない筈だ)
そんなの知らない
(動かない、笑わない君なんて)
そんなの君じゃない
(嘘だって言って)



君が居ない世界は全ての色が抜け落ちてしまったようで
それまで当たり前のように思っていた君の存在が
僕の中どれほど大きかったのか初めて思い知らされた



あの子は、あのボンゴレという場所で
ボンゴレとして死んだ
ボンゴレという名を背負っていたから殺された


僕はある意味守護者の中では一番君から遠かったから
君と一緒に居た時間も短くて
ボンゴレ十代目と沢田綱吉がまだイコールで結べなくて

だから彼の死も受け入れられない
(でも君はあんな箱の中で眠り続けて
もう目を覚まさない)


何のために彼が死んだのかなんて、理解したくなかった

時間が巻き戻せれば、自分は彼を止めただろうか

(嗚呼、でもきっと
僕がどれだけ止めても
彼はきっと申し訳なさそうに笑って
やはり自分の意志はまげないのだろう)

そして時間を巻き戻しても、そのたび僕は君を失うんだ
(そんなの冗談じゃない)


そう、今の君には会えないけれど
過去の君は触れられる
十年前の彼の額に灯るオレンジの炎は
とても懐かしく感じた
今の僕が知っている彼のモノより小さいけれど
でもソレは間違いなく君のモノで
君がまたここに居る、ということに
信じたこともない神に感謝すらした


あぁ、やっぱり過去の自分なんかと入れ替わってやらなくてよかった
(この時代の守護者で、僕が一番君と長く過ごせるなら)


十年前の君はやっぱりまだ子供で
こんなドロドロした世界に捕まっていない



ゆらゆら揺れる炎はまだ消えていない

なら、復讐をしてやろう
君の時間を止めた奴らに
僕から君を奪った奴らに
君をボンゴレとして死なせた奴らに
他ならぬ、君自身の手で奴らに思い知らせればいい




(大空を汚した愚か者に報復を!
嗚呼なんていい響きだろう!)








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