novel.02

□その箱に空を詰め込んだ
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その小さな箱はズシリと手に重く
冷たいはずなのに手にした時、燃えるように熱く、優しく懐かしく
たぶんきっと自分はこの中身を知っていた



そのボックスは大空専用らしい
ボンゴレ十代目の遺品だったそのボックスは
これを開けることが出来る人物にこのボックスを、走り書きした紙と一緒に
ボンゴレ十代目が射殺された時も持っていた物らしかった
超直感からか、大空がそんなメモを残したため
守護者は全員がそのボックスの開口を試みたが、誰も開けることはかなわなかった

炎が弱かったわけではない、鍵が合わなかった、
諦め切れず何度も何度も、炎が尽きるまで挑戦したがだめだったと
十年後の山本さんが困ったように笑っていた
雲雀さんは何も言わず、俺の手に置かれたボックスをじっと見てまたふらりと返ってしまった



手渡され、開けてみろとリボーンに言われたが
俺はどうしても開けることが出来なかった
いや、俺が炎を灯した指輪を差し込めば、直ぐに開くと分かっていた
だから開けることができない
コレは此処では開けてはいけない、だだ強く強くそう感じた


やっとのことでここで開けちゃだめな気がする
と伝えれば
皆さとってくれたらしく、ただそうか、と言って無数ある部屋の使っていない一室に案内してくれた


だから今は部屋に一人
俺と小さなボックスだけが在る

リングに炎が灯る
何故か胸が一杯で

指先に冷たい何かが落ちた
それが涙だと気付いたときには、それは俺の目からはらはらて伝い落ちて止まらなかった
それでも不思議と自分自身は落ち着いていて

ボックスに指輪をはめ込んだ


(嗚呼、知らないはずなのに懐かしくて悲しくてこんなにも近いのに遠い)


光とともにボックスからあらわれたこの人を、自分は知っている
色素の薄い、光の中で金に透ける髪と琥珀のような瞳
黒いスーツに身を包んだその人の手に付けたグローブには]の文字


(嗚呼、そうか)


手にしたときからずっとずっと中身なんて分かってた


自分の感情すら分からないなか、涙だけが止まらなかった


ただ茫然と彼を見上げる俺に
彼は痛ましそうに眉を寄せ、俺をそっと抱き締めてくれる



(ボンゴレ十世、貴男は俺にどんな思いでこれを託した
貴男は・・・・俺は、
そこまでして守りたかったのは)



(皆が見たらどう思う?
これを開けようとした皆の気持ちは


俺は、皆の前でこの箱を開けられるのだろうか)








箱に空と祈りを詰め込んだ
業は深く、その中では息すら出来ない









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