AKG Novel.

□リライト
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あの言葉だけがガンガンと頭に響いて
何時の間にか、嘘で塗り固められた言葉しか
告げることを許されなくなった





「ねぇ、俺が憎い?」



もう日も落ちきって月明かりだけが視界を助ける
薄暗い部屋にいきなり呼び出さた


その部屋の主人は一人窓際に立ち
静かにこちらを見据えて言そう言った


彼はもう何回目になるかも分からない
既に習慣になってしまった問いを
俺に投げ掛けた



「ねぇ、スクアーロ」



俺が憎い?
今度は囁くみたいに、かすれた声をこぼすように

笑いながら返事を待つ



二人しか居ない
明かりさえつけていない薄暗い部屋に
綱吉の髪と瞳だけが色を持っているかのような錯覚に目が眩んだ



「憎くなんかねぇぞ」



問い掛けに対しての答えを返す

既に用意された何時もの答えが
するりと声となって部屋に響いた



「じゃあどう思ってる?」



「お前になんざ興味ねぇな゙ぁ」



吐き捨てるように言うと
綱吉は冷たく冷えた光しか灯さない琥珀の目を閉じ
子供のようにあどけなく笑って



「よかった」



心底安心したように笑いかけてくる

いっそ暗くて見えなければ良いと思うその笑顔も
淡いはずの月明かりが窓辺に立つ彼を照らすせいで
こちらの視界にはっきりと映る



綱吉は窓際から離れ
ゆっくりと歩いて部屋から出ていった


去りぎわにお休み、と小さな声で言われたが
返事など出来なかった


ドアの閉まる音と
小さくなる足音を聞いて

俺は一人残された部屋で頭を掻き毟り
あぁ、何を傷ついているのだと自分自身を嘲笑った





『ねぇ、スクアーロ
俺は愛されるのが恐いんだ』



『誰かがもし俺を愛してくれても
俺は何もあげられないし、
俺に愛なんて重すぎてきっと潰れて死んじゃうんだ』




頭の隅で
あいつがまだ泣き方を知っていたころの言葉がグルグルと頭を巡った



『ねぇ、俺が憎い?』



・・・・憎いはずが無い
苦しいくらい愛しいと言ってしまおうかと
何度思ったのか分からない位に


だから憎くなんか無いと言って
興味がないと嘘を吐く



何時になってもきっと報われない
分かっているのに
何処かでもうこの想いは手放せないのだと
頭はとうに理解していた










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