AKG Novel.

□ロケットNo.4
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誰も居なかった
何も無かった


いや、違う
あいつの周りが、ゴッソリ無くなったんだ
俺だけ残してゴッソリ、消えた

一番大切な奴とその周りが、そしてそこに俺は入れなかった






あいつが言ったんだ
高校を卒業したらイタリアに行くって

そうだツナは言った
野球頑張って、そう言った
普通でいられるのは高校までだから悔いは残さないで、
そう確かに言った

だから俺は・・・・




「俺はお前の雨になれてたんだよな?」



口から自然に零れた言葉は、嫌に耳に響いく



そうだ高校までこっちで過ごすって聞いたから
ツナが応援してくれたから
俺は野球で有名な高校に推薦で入る事にした
内定ももらって、報告したらツナも自分の事みたいに喜んでくれた




そして高校の入学が近づいたある日
ツナは何処にも居なかった


(そうだ)

(嫌な予感はしてた)



何時だったかなんて忘れた
日常に溶け込んだ違和感


(あぁ、そうだ)


(あの時からツナは決めてたんだ)











「なぁツナ、俺はさ、将来どうなるんだ?」



何時ものように昼休みに三人で屋上で昼食べたり話したりして
獄寺が用事で先に帰って

その日は偶然あのボウズもいなくて
久々にツナと二人きりになった



座り込んでフェンスにもたれて
普通に喋ってた筈なのに
何時もと同じだった筈だったんだ


でも、不意に見たツナの横顔が何故か見慣れないような
知らない奴みたいに思えて


それがたまらなく不安になって、
聞きたくなってしまった




ツナは一瞬驚いたような顔をした

イキナリそんな質問されたら誰だって驚く、(しかも本気で、だ)
当たり前の反応なのに
嫌な予感がして、ひどく焦った

沈黙が長く感じる
本当は一瞬だったのに、堪え難いように感じた


そんな考えが顔に出ていたのか

ツナは優しく笑ってフェンスに預けていた頭を俺の肩にそっと寄せて



「ソレは山本が決めるんだよ」



優しく優しく、まるで宥めるみたいに言った






そうだツナの中では
あの時にはもう決まってたんだ

俺を置いていく事が





そこでプツリと切れた思考の糸に
未だ置いてけぼりをくらって茫然としている自身を笑った


空を見上げると今にも降りだしそうな雲が大空を隠す


泣きだしそうな空
自分の様だと一瞬よぎった考えにまた苦笑した



これからの行動なんて決まってる
探すだけだ。あの愛しい大空を
あいつが俺を思って置いていったなんて承知の上だ












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