AKG Novel.

□ブルートレイン
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君がただ幸せで在ればそれだけでいい
それが叶うなら、他に何も望まない


辛そうに笑いながら、守るなんて言って
苦しそうに眉を寄せてその額に炎を灯して戦う

守るものばっかり増えちゃって

ねぇ、綱ちゃん
なんでそんなに傷付かなきゃいけなかったの?



嗚呼、本当に
君がただ幸せで在ればいい
それが叶うなら、他に何も望まないのに


僕のその唯一の願いは叶わない
君が居ないから叶わない




晴れ渡った空を見上げる
目に入るのは大空と太陽と雲



(あぁ、本当に邪魔)



銀髪の男は大空に浮かぶ雲と太陽を睨み付ける



(空だけでいいのに)


(あの子だけ居れば、それでよかったのに)



少なくても白蘭にとって、雲も太陽もただ疎ましい存在でしかなかった

それだけでなく、霧も、雨も、嵐も、雷も
全て必要とはしていない



(君は何にも染まらなければ
君が何も包み込まなければ)


(君がそう在る事を強要されなかったら)



でもそんな君だったから
ひかれてひかれて、どうしようもなかった



(嗚呼空があんなに遠い)



手を伸ばしても届かない
此処からいくら叫んでも君には聞こえない

どんなに求めたって、大空は遠い



「ねぇ、綱ちゃん
僕はね、今の綱ちゃんには触れられないけど

もうすぐ昔の君が来るんだ」



そう言って白蘭は大空を見上げた

なによりもボンゴレ十代目を愛し、そしてボンゴレを嫌悪した彼にとって
頭上に広がる空だけが、この世には居ないボンゴレ十代目と繋がりのあるモノになった



「まだね、完全にボンゴレ十代目じゃない君が来るんだ」



「十年前の」



白蘭はすっと目を細める
十年、今まで自分が生きてきた時間から考えると
とても長い時間だ



(綱ちゃんはまだ学生で、子供で
でも綱ちゃんの周りにはアイツ等が居て)


(・・・・最悪、だ)



許さない許さない許さない



(君が、幸せであればいいのに)

(どうしたって、アイツ等が邪魔になる)



大空を染めるものなんてなければいい



(決めた)



(今の守護者も、十年前の守護者も
みんなみんな、消してしまおう)



ねぇ、綱ちゃん
そうすれば君はきっと悲しむけど

あいつ等の為に自分から死にたがるなんて
そんな最悪な未来は来ない



「あと少し、あと少しで君が来る」



(俺が知ってる君じゃないけど
それでも確かに君に会える)



「嗚呼、早く君に逢いたい」



男はそう呟いて、遠い大空に手を伸ばした



(届くわけが無いけれど、それでも)











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