AKG Novel.

□或る街の群青
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炎が灯る
永い永い間、待ち望んだ
あの光がやっと見えた



(ずっとずっと、ただ君だけを待っていた)



深い業を生み出し
欲と悪意と裏切りと血に塗れて
そうして育ってしまった我が子の様なファミリー
遥か昔に手放したが、心は痛んだ
そして最後に願ったのは









「やっと、巡り合えた」



暗い暗い世界で男はそう言った

この場所には男一人しか居ない
あとの八人の立ち入ることの出来ない場所だった
彼自身がそれを望み、彼にはこの世界で望みを叶える資格がある
男はこの場所で一人の人物を気が遠くなるような長い時間待っていた


男の指には指輪がはめられている
細やかな装飾と美しい輝きを放つ指輪は、男にとって特別なものだった
ボンゴレリング、と呼ばれるソレは
今、炎に包まれていた



「今度こそ、逢える」



男は愛しむように炎に包まれた指輪をグッと握り締めた
炎が男を燃やすことはなく、男の手の中からただ淡く光をもらす


リングに炎を灯したのは、男ではない
ボンゴレリングを指にはめ、意志を炎に変えたのはボンゴレを継ぐ十人目の少年
男は少年が指輪を手にした時からずっとこの瞬間を
この場所から彼を永い間待ち続けていた



(満たされなかった心が軽くなるみたいだ)



心を砕き、遠い昔に想いだけをリングに残した
血に塗れ、肥大する業を被って
リングを奪いあう後継者を幾人も見てきた
それでも此処に留まり続けて



(そして巡った君に逢えた)



かつて私が渡った小さな島国で受け継がれた私の血
彼はその血を継いで生まれた



「沢田、綱吉」



そっと名前を紡いでみる

あの頃の、あたりまえだが私とは違う、名前



(名前だけじゃない、彼と私はきっともう別のモノなのだろう)



砕いた心をリングに残し、残りの魂はまた巡っていった
そして私と彼が生まれた



(私と彼の魂は、同じだ)



残した欠けらはリングに、ボンゴレ一世ジョットとして
もう片方は巡り、現世に生まれ変わりボンゴレ十世沢田綱吉として

いつまた再び逢えるか分からない時の中で
けれど違える時にかならずまた逢えると思った超直感を信じて

そしてまたリングに待ち続けた炎が灯った



「また一つになれるだろうか」



「愛しい片割れ」



きっと彼と顔をあわす時は近いだろう

暗いこのリングの中で、今はその瞬間に焦がれるだけだ



(嗚呼、早く早く)




暗闇の中ただ光を求める子供の様に
我が子を愛しむ親の様に
男は輝く指輪の向こうに片割れを思う













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