Gift novel.01

□距離と距離 side.R
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二人きりの部屋で、あいつに言った『好きだ』と言う言葉は
どれだけの思いを込めても、お前にどれだけの意味を持って届いた?





俺にはお前の言葉が重く重く響いて離れない

耳に入ってくるこいつの声を
言葉として受け入れるのに時間が掛かった
(理解しているけど認めたくない、悪あがきなんだ)



だって、知らなかった
お前がどんな思いでいたかなんて



「そうやってまた、からかうの?」



目の前に居るこいつが誰だが一瞬分からなかった
今まで見たこともないような冷たい目が
色素の薄い髪の間から俺を貫いた


誰だ、これは


(知らない、こいつは一度だって
こんな表情はしなかった)



綱吉の口がうっすらと笑みを作る
ゾワリ、と悪寒が走った
そうだあの目は俺が最初、彼に向けていたのと同じ拒絶の目


(記憶に鮮明に浮かび上がった、彼を拒んだ自分の言葉)



「今更だよ、リボーン
子供の戯言の方が信じられる」



唇はひどく穏やかな笑みの形のまま
綱吉はただ諭す用にリボーンに言う



「俺もね、リボーン
昔はお前が好きだったんだ。愛してたよ」



「でも」



「でもね、諦めたんだ」



形だけの笑みを張りつけて
綱吉は黙り切ったままのリボーンにゆっくりと近づいた

そっと伸ばされた手が
リボーンに触れる直前で止まる



「・・・・ツナ?」



困惑したリボーンの擦れた声が綱吉を呼ぶ
答えるようにして、綱吉がまた口を開いた



「昔からずっと、お前に許された距離は此処迄だったよな」



「なぁ、もう俺はお前からの拒絶を
悲しいとすら思えなくなったんだ」



そしてゆっくりと下ろされた手が
目に見えない何かを断ち切ったように思えた



(嗚呼、何処から間違えた?)



(待って、待ってくれ
違う、俺だってお前を愛してた
ずっとずっと

お前が手を伸ばしてくれるのを待ってたんだ)



「・・・・違う」



「なにが?」



やっと絞りだした否定の言葉は
あいつには意味も価値もない只の音なのだろうか



「違う・・・・違うんだ、ツナ」



お前がずっと、そんな想いでいたなんて
あぁ、言葉に出来ない後悔ばかりが渦巻いて
息が出来ない


(求めてばかりで、動かなかった罰なのか)



「昔はお前が不意に触れてくれるだけで
泣きたくなるほど嬉しかったのにな」



(焦れて自分から触れたお前の手は暖かかった
そして触れられて嬉しい反面
お前に普通に触れられる他人に嫉妬した)



「もう全部、いらないんだ」



断ち切らないでくれ
言いたい言葉は全て詰まって出てこない

頭の中がグルグルとかき回されるなか
冷たい琥珀色の瞳が静かにそらされた



線を引いたのは俺
線を守りすぎたのはお前
踏み出せなかったのは俺とお前
切り捨てたくはないのに、言葉は詰まって伝わらない








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