Gift novel.01

□貴方は遠い
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アンケ1位
『 L o S + 』&眠る王(白綱・10年後)
お礼文





『あ』なたはとおい






闇に慣れた目じゃ、光のさす場所は眩しすぎて行けない
貴方はそう言って笑っていた

光になれたこの目じゃ、きっと君と同じ世界に行くことも
見ることも出来はしないんだ






俺が初めて彼に出会ったとき彼はまさに大空だった
人々は畏怖と敬愛と尊敬を込めて彼をボスと、ボンゴレと呼んだ
そして俺も初めは彼をそう呼んでいた

何時しかプライベート(はたしてマフィアのボスに本当のプライベートは有るのだろうか)
では俺は彼を愛称で呼ぶ様になっていたけれど


そして知ったのはボンゴレではない彼だった

温厚だか、強く厳しく冷酷であるマフィアのボスは
優しく、脆くどこまでも平凡な平穏を愛する男だった
彼の人となりを知るたびに俺の中で
ボンゴレの大空は一人の男に姿を変えた
畏怖や敬愛を向ける存在からもっと別の、沸き立つような感情を向ける相手に



押さえるのも苦しいくらいの想いに蓋をして
でも彼を知って浮かんでくる疑問もあった
ソレはだんだん膨らんでいって、久々に二人で過ごしていた時に
俺は綱ちゃんはなんで此処に居るの?と彼に聞いたことがある


(今考えると俺は彼に何を聞きたかったのだろう
漠然としすぎていて分からないけど俺は多分、彼に
何故、こんな君とは相容れなかった筈のこんな世界に身を置くのか
と聞きたかったんだと思う)


するりと俺の唇から出ていた言葉に

質問の意図も分からないソレに

彼はあの困ったような笑顔を浮かべて
なんでだろうね、と何処か遠くを見つめたような表情でポツリとこぼした



(嗚呼、あの彼の顔が忘れられない)



何も言わなくなった俺に
彼はまた小さな声で俺に言った



「ねぇ白蘭、こんなに近いのに
立ってる場所は違いすぎるね」



寂しそうな彼の言葉の真意を俺が全てすくい上げる事は出来なかったけど
彼との間に言い様の無い距離を感じた
(それは前々から気付いてて、でも目を背けていたもので)



「綱ちゃん、君はこっちに来れないの?」



「無理だよ」



彼はまた笑ってみせた
困ったような、苦笑い
普段ボスとして緩やかに浮かべている綺麗な作り物とは違う


一瞬、ザワリと俺の中の何かが騒いだ



「でも俺は綱ちゃんを引きずり込むよ」



自分の顔が歪んでいる気がしたけれど
彼を離す気はさらさら無かった



「そんな笑顔、させてあげない」



スッと目の前の彼に手を伸ばした

触れた頬は暖かかったけど
彼との距離は直ぐに触れることなんて不可能なくらい遠い



「そっちには行けない」



彼は頑なに言うのだ



「白蘭、俺はね何時も闇ばかり目で追ってた
闇に慣れた目じゃ、光のさす場所は眩しすぎて行けない」



彼は諦めたように笑う



(そんな、嫌だ)


(俺は貴方という光ばかり追ってたのに)




俺が愛してやまない光はすでに闇に捕われていた


光になれたこの目じゃ、きっと君と同じ世界に行くことも
見ることも出来はしないんだ



(貴方と同じ場所に落ちるという望みは
貴方が居るかぎり叶わない)


(嗚呼、こんなにも)



貴方は遠い








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