long.001

□夏の日、残像(1)
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夏の日、残像






まだ暑さが残る、少し服を着くずすが、まだまだ暑い。
黙々と階段を彼の人を目指してのぼる。階段を上り終え、また歩く
ジャリ、と歩を進めれば音がする。
毎年、皆が約束しなくても集まる。自分も、三浦や笹川兄妹も、此処に集まる。
雲雀は群れるのは御免だ、と一人で来るが。

それから何時も話なんかしがら、綺麗な華を供えたり、暑いだろうと墓石に水をかけたりする。土産だ、なんて言って酒も一緒に。



十回目の彼の人の命日、彼の人を失ってから十年がたった。

墓標に刻まれている名前は『沢田綱吉』

高校を卒業する前の最後の夏だった。工事現場の資材が落下、顔は潰れ、持ち物で身元確認をしたそうだ。

皆悲しんだ。獄寺にいたっては魂を抜かれたようにしていた、そしてある時フッと姿を消した。
アイツが日本に来たのはツナに合うためだったと聞いていたし、ツナの思い出が残るこの地に辛い想いをしてまで留まる意味も、意志も無かったからだろう。



皆で墓の方に向かう、あと少しと言うところで、先を歩いていた三浦と笹川が立ち止まって向こうを見ていた。



「どうした?」



「あれ・・・・」



指差された方を見ると、アイツの墓の前に誰かが立っていた。
深く被った帽子、それからはみ出た長い髪は色素が薄く、遠目では解らないが、アイツの墓の前で立って何か喋っている様だった。



「誰でしょうね?」



十年アイツの命日には欠かさず来ていたが、見覚えが無い。



「さあな、親戚かなんかだろ」



そう行った矢先、振り替えってこちらを見た人物が、笑った。

(あぁ、あれは)

ふわり、と優雅に笑う様や、纏う雰囲気は似ても似つかないものなのに、



「ツナ・・・・」



ぽろり、と出てしまった愛しい者の名に、自分でも驚いた。

相手は何だ、と言う様に首を傾げ、



「あぁ、君たちも彼に合いにきたの?」



そう、やはりアイツとは全然違う落ち着いた深い色を持つ声で言うと、またにこりと笑い、こちらの返事も待たずに軽く頭を下げて去っていった、



帽子は深くかぶったままだったから顔は解らなかった。唯一似ていたのは髪色だけだった。


けれど、
アイツの残像の様で、必死に記憶に焼き付けてしまった。









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