long.001

□夏の日、残像(7)
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僕だけ残して




いきなり携帯を取出して何処かに連絡し始めやがった。
短い会話、すぐに話は終わったようだ。

携帯を上着に押し込んでこっちに向き直った。



「今の考えが変わんねぇならまた明日、此処にこい」



別にまた此処にくる理由なんてなかった
でもあの人に対する想いはどうしたって変わらない
それを否定されるのだけは我慢できなかった。

言われた通り来てみれば、ディーノと知らない奴が居た。

長いコートを着込み、椅子に座っているから身長も解らないし、深く帽子を被ってて顔も解らない。



「やっぱり来たな」



壁にもたれかかりながらディーノが言う



「何で呼び出したんだよ」



「お前に会わせたい奴が居てなぁ」



「・・・・」



ディーノは軽くため息を吐き、言葉を続けた



「お前も知ってるだろ、ボンゴレが代替りした事」



「あぁ」



知っている。結構最近の事だ。



「ボンゴレに入りたいんだったら、紹介してやるぞ」



「ふざけんな!!俺がつかえるのは十代目だけだ!!」



「ファミリーに入りたかったんじゃねぇのか?」



「他の奴につかえるくらいなら死んだほうがマシだ!」



そう言い切る獄寺にやれやれと息を吐き、椅子に腰掛けずっと無言だった人物に目を向ける



「そろそろ観念しろよ」



「おい!そーいやそいつ誰だよ」



俺がそう言うと、男はおもむろに立ち上がった。
俺より身長は低い。

ディーノがすっと近付き、何やら話した後、部屋から出ていった。

知らねぇ奴と置き去りにされた、イライラしてズボンからタバコを出して吸おうとしたら話し掛けられた。



「煙草は体に悪い、少し控えた方が良いよ、隼人」



懐かしい様な声だった。
でも、知らないような、深みがあって落ち着いた声

歩み寄られ、距離が近くなっても動けなくて、

帽子を取って、優しく微笑んでいるのは、大人びてしまっているけど間違いなく貴方で、



「久しぶりだね、隼人」



何で、とかどうしてとか。色々ごちゃ混ぜだったけれど。気が付いたら目の前のこの人を抱き締めて、みっともなく大泣きしていた。










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