long.001

□夏の日、残像(9)
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それだけでいい






暑い。日本の夏は蒸し暑い
まだまだ残暑厳しい町の墓地で綱吉は一人立っていた
リボーンは少し前に先に帰ったから今は一人だ。

この平和な日本、お忍びできている綱吉を襲うような輩も居ないだろうしその辺のヒットマンから掠り傷でも貰う様なヘマはしない。

顔を隠すためと、直射日光避け(後者の方が彼にとっては重要だったが)に深く帽子をかぶり、後はいつも通りの服装だ(あくまでボンゴレとしての、だが)

墓に向き直る



「十年経った、長かったのか、短かったのか」



ぽつりぽつり言葉をこぼす



「区切りも良い、今更お前に未練も無い。
十年前に捨てたことを後悔も無い、忘れられる事への恐怖も少しもわかなかったよ」



笑みが少し苦笑を帯びた



「何故だかな、ソレを周りは悲しむんだ。」



「今は俺も悲しいよ、完全に消せたと思ったのに、まだお前は消えないんだな」



そう呟くと、ずっと気配を感じていた方に振り向いた
誰なんて気配や読心術で解っていた

振り向いて笑い掛ける
彼らには俺が誰だか解らないだろうし、俺は『もう居ない』のだから



「ツナ・・・・」



聞こえた言葉にまた悲しくなった。自分にとってソレはもう捨てたし、早く消して欲しいモノでしかない


何もなかったように首を傾げ、保険として声を変えて、問い掛ける



「あぁ、君たちも彼に会いにきたの?」



墓をさして軽く笑う。作り物の笑み

まだ『沢田綱吉』が消えて居ないならば弔いの意味が無い

もう此処に居る意味も無いのだ、と
彼らに軽く頭を下げその場から去った


ホテルに戻ると一足先に帰ったリボーンが居た



「・・・機嫌が悪いな」



椅子に座りながら話し掛ける



「まぁね」



「どうしたんだ」



「なんでも無いよ、さぁ、イタリアに帰ろうか」



あそこには少し溜まった書類と血生臭い日常。
それに『ボンゴレ十代目』の俺を待つファミリーが居る。
あそこが俺の居場所







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