long.001

□タイトロープ(1)
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広い執務室は暗く、どこか淋しい

一際重厚な造りの椅子に腰掛けるのは、まだ年若い青年

色素の薄い髪は陽に当たると金にも見え、目には琥珀を埋め込んだようだった


静寂が包む部屋に、コツコツ、と
扉を叩く音と入室の許可を求める声が響く

入室の許可を出せば強面の男とフードをすっぽり被った子供が入ってきた



「ボス・・・・」



強面の男が青年に話し掛けると、青年は二人を一瞥し、少し冷たい光を宿した目を細めてから



「レヴィ、マーモン、お帰り」



にこりと表情だけで笑う



「タダイマ、綱吉」



と返したのは小さな子供
強面の男は黙って頭を下げた



「二人ともご苦労様
報告書はまた今度で良いからゆっくり休んで。」



そう告げるとまた手元の書類の処理を始めた


綱吉のその態度は退室の合図のようなものだ

こうなれば何時まで部屋に留まろうが、こちらから話かけない限り
彼はこちらを見ることもしないのは今迄の経験で知っていた

レヴィが頭を下げ、部屋を後にしようとする



「ボス、居るー?」



開けようとした扉が開き、ベルフェゴールが入ってきた

綱吉はズカズカと我がもの顔で入って来たベルフェゴールを咎めようともせず、
少しベルフェゴールを観察するとにこりと優しげに笑った



「仕事終わったよ」



「お疲れ様、よくやってくれたね、ベル」



レヴィは綱吉がベルに向けた笑顔と言葉を聞くと、部屋を出ていった

自分が欲しくてしょうがないものを簡単に手にしたベルフェゴールへの嫉妬は押さえがたいものだったが、
それを曝け出しボスに幻滅されるのはさらに堪え難いことだった


閉められた扉と遠ざかった足音を聞き、
綱吉はずっと黙ってこちらを伺っていたマーモンが何か言いたげなのが気になった



「どうしたの?マーモン、何が言いたそうだよ?」



にこりと笑って問い掛ける



「悪女だね」



そう一言えば、綱吉はニッコリと艶やかに笑った



「マーモン、俺は男だよ?それに悪女なんて呼ばれる覚えはないなぁ」



くすくすと笑い、手元の書類を執務机に置く

少ししてから、あぁ、と何かに気が付いたように頷くとまた顔を上げた

マーモンを見て、こっちにおいでとでも言う様に手招きをする



「?」



何か解らないが取り敢えず誘われるままに近づいた

執務机の上に乗ると綱吉はいきなり手を伸ばしてマーモンを抱き締めた



「お疲れさま、頑張ったね、マーモン」



そう言って頭を撫でる



「やっぱ綱吉悪女じゃん」



今度はベルフェゴールが綱吉に言った








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