long.001

□タイトロープ(3)
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「スクアーロ、綺麗だね」



イキナリ後ろから投げ掛けられた言葉はひどく優しい声色で響いた



「あ゙ぁ゙?何がだよ」



わざわざ振り返って返事をすれば
この部屋の主は何時も座っている執務机ではなく部屋に置かれているソファに居た

こっちを笑って見ているその目は、何もかもを見透かしている様で落ち付かない



「スクアーロの髪、綺麗だね」



「なんだイキナリ」



ソファにもたれかかりながら光の加減で琥珀色に見える目を細めて笑った



「スクアーロ、こっち来て」



ポンっと、自分が座っている隣を叩いて呼ばれる
仕方なく言う通りに横に座る


少々乱暴に座ったがそれでも造りが良いソファは軋みもせず、隣に居るボスも文句は言わなかった


少し引っ張られる様な感覚がしたと思ったら、隣では綱吉がスクアーロの髪を触っていた



さらさらの髪
綺麗な銀色の、真っすぐな髪



「うん、綺麗だよスクアーロ」



手に取って触ってみると、やっぱり自分の髪とは全然違うって思った



「好きだな・・・・」



「・・・・オイ」



訝しげな顔をされたから
微笑んで見せた





いつか誰かから聞いたことがあった

こいつ、綱吉の癖

フッと思い出してしまった

『知ってる?ボスの癖』

聞き流したと思っていたが

『綱吉はね、不安定なとき』

やっぱり頭にこびり付いていたらしい


『喋る時、普段より多く』

『相手の名前を呼ぶんだ』






「・・・・オイ」



何故だか苛々して呼び掛けると、
作り笑いがかえってきて、余計に苛立つ自分に気が付いた



「お前は・・・・」



隣に居る年の割に幼い面影を残すボスに触れようとして・・・・止めた
一瞬、こいつの顔が泣きそうに見えたから



優しく伸ばされた手に、少し辛そうに眉を寄せてこっちを見る目に、
泣きそうになった

拒絶、してしまった

だって・・・・まだ、だめ
まだ誰かにすべっちゃいけない
まだ一人で頑張らないといけない
優しくしないで




綱吉が一瞬、目を閉じた
押し込めるように、耐えるように


次に開いた琥珀の瞳は冷たく、落ち着いていた



「どうしたの?」



「いや、なんでもねぇ」



またため込みやがった、そう思ったところで何も言えない

誤魔化す様に茶色の頭にポンポンと手を置いた


驚きに少し目を見開いた綱吉に気付かない振りをする
そうしたほうが良い、と漠然と感じた

それでも、

(あんなふうに辛そうに名前を呼ばれるのはごめんだ)









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