long.001

□タイトロープ(6)
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あぁいけない
こんな日は弱くなる、何時もの自分じゃ居られなくなるんだ




熱い体を無視して、何時も通りに仕事をこなしていた

所詮暗殺部隊、もともと書類なんて少ない方で、
だがそれでもそのボスとなれば仕事は多い



不調な体を気遣うこともしなかったのが悪かったのかも知れない

だが風邪はおろか骨折してたって隠し通す自信がある


弱みを見せることが即ち死へのリスクを上げる
それがこの世界の常識だ

自分はそれを知っている



あぁ、なのに



「ゔぉ゙お゙い!何やってんだ!!」



イキナリ怒鳴り声をあげてズカズカと近寄ってきた部下に視線を向ける


どうせ何時もの芸人のツッコミみたいなお小言を言ってくるだろうと思っていた
(彼は見かけによらず中々の常識的思考回路の持ち主で、苦労性なのだ)が、
今日は目がかなり本気で怒っていた



「何?」



どうかした?と聞いてみれば思いっきり舌打ちされる



「てめぇは何処まで馬鹿なんだ!!」



「イキナリ何さ」



ケロリとした口調で言い放つとあっちは更に機嫌を悪くしたらしく、
もともと鋭い目を更につり上げて睨んできた



だが部下の威嚇に怯んでる様じゃ暗殺集団のボスは勤まらない
(それに此処は曲者揃いの集団だ)



埒があかない、とまた書類の整理を始めようとすると
今度は更に近付き、目の前まで歩いてきた




「言いたいことがあるなら言いなよ」



いい加減にしてくれ、という感じだ
こっちだって見つめられ続けるのはツライ



「・・・・来い」



グッと手を捕まれ、引っ張られた

抵抗すれば簡単に振りほどけただろうが面倒臭くて止めた


言いたいことがあるなら言いなよ、そう言ったのは自分なのだから仕方がない




コツコツとただ廊下を歩く音だけが聞こえる

無理矢理引っ張ってきた手が何時もより熱く感じた


抵抗されれば適わないのは解っている
それでも手を振りほどかれないのは自分の行動を拒絶されていない証だろう


そうしているうちに、目的地である部屋の前に付いた



「・・・・入れ」



半ば引きずられるかのように案内されたのは
ヴァリアーの幹部全員に一部屋ずつあてがわれた私室の一つ


(確か此処は・・・・スクアーロの部屋だったかな)


ぼんやりと辺りを見回していると、
不意にドアがし閉まる音が聞こえ

そのまま後ろから抱き締められた



相手なんて振り返らなくても解る

さらりと流れる銀をただ目の端に捕らえた



「どういう・・・・「いい加減にしろ!!」



つもり、と続く筈だった声はかき消された








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