long.001

□猫物語
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ピンと真直ぐに伸びた尻尾
スラリと伸びた手足に鋭い光を湛えた瞳がとても綺麗だった



『今日和、君は誰?』



そう言って、こちらを見ていた小さな君に目線を合わせて
座り込んだのが始まりだったのだろう




綱吉は庭に一番近い静かな部屋で暖かな陽の光を受け
自分の膝に座り込んだ猫の背を撫でながら
ふとこの猫との出会いを思い出して笑った



第一声はその姿からは想像も出来ない濁点付きの声で威嚇されたのだ

(『にゃぁあ』ではなく『に゙ゃぁ゙あ゙』だった)

後から出会い頭のアレは威嚇じゃなくて地声だと解ったが
それもまた個性だと思う事にした



(馴れればなんとも無いしなぁ)



最初は威嚇されっぱなしと凹んだが、今はそんな事はない

しなやかな銀の背中を撫でながら、
綱吉はなんだかんだで自分が飼っている
(懐かれてこの猫が家まで付いてくる様になり
何時の間にか家猫になっていた)
猫を見て苦笑した



「・・・・?」



しばらく本を読みながら飼い猫の背を撫でていると
ふと手に違和感を感じた

それまでおとなしく座っていたスクアーロが
イキナリ毛を逆立てて外に向かって威嚇している



「どうしたんだ、スクアーロ?」



名前を読んで諫めようとしても庭の方に向かって威嚇を止めない

すると金色の何かがひょっこり顔を出した



「あ、ベルか」



ヒラリと金色の猫が部屋に入ってきた



「にぁ」



短く一つ鳴くと
威嚇するスクアーロなど居ないかのようにスタスタと歩いてくる



「また来たの?」



スクアーロが飛び掛からないよう抱き上げてから
ベルに向かって問い掛けると
ナァア、と先程より多少長い泣き声で返事をすると
綱吉のすぐ傍で毛繕いを始めた



何時からだったか解らないが
ベルが此処に来るようになって大分経った
(スクアーロを飼い始めてわりと直ぐだった気がする)

ベルはお隣で飼っている猫で
血統書付きのそれは高い猫らしい(ご近所のオバサマ情報)
そーいえばお隣も豪邸だ



「なんで家には猫が集まるのかなぁ」



今は居ないが頻繁に遊びにくる目付きの悪い顔に傷がある赤目だとか、
綺麗なくせに攻撃的な学校を縄張りにしてるらしい黒、
まだ子猫の筈なのに無茶苦茶強いの(何度か喧嘩を目撃してしまった)、
最近自分の行く所で頻繁に目撃するオッドアイを思い出し、

綱吉は深いため息を吐いた



自分にもたれかかり少し甘えるような仕草を見せたベルに
癒されながら手を伸ばす


それまで不貞腐れた様にしていたスクアーロが
気を抜いた瞬間腕をすり抜けて
ベルと喧嘩を始め、それを捕獲する為綱吉が躍起になるのは
沢田家では割りと日常茶飯事だった



その後捕獲され、まとめて外に放り出されて
暫らく撫でてもらえないという罰をくらった二匹猫のは
罰則期間(二日間)が終わるまでずっと落ち込んでいたらしい









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