long.001

□猛猫注意
1ページ/1ページ





(あぁ)


(またやってんのか、あいつら)



綱吉は深く息を吐き出し、ガックリと肩を落とした


目の前には二匹の目付きの悪い黒猫が
今にも相手に飛び掛からんばかりに睨み合っている


猫の筈なのに何故か迫力が凄まじい
普通なら触らぬ神・・・・いや、猛獣に祟りなしだが
生憎、今正に二匹がバトルを繰り広げようとしているのが
自分の家の庭なのだから話は別だ


もう一度深いため息を吐き、次いでスッと息を吸った綱吉は
睨み合う黒猫二匹を見据えて大きな声で叱り付けた



「こら!ザンザス!恭弥!!」



名前を呼ばれた二匹はピクリと反応した後
動きを止め、綱吉の方に目を向ける






「ったく、お前等会う度喧嘩ばっかりして・・・・」



綱吉はブツブツと文句を言いながら自分の両脇に座り込んだ二匹の黒猫の背を撫でた



取り敢えず今にも飛び掛かりそうな二匹を止めたものの
自分の声にこちらを振り向きはするが
お互いに警戒しあい(殺気が垂れ流し状態だ)一歩も動かない二匹に

いい加減にして欲しいと内心うなだれながら、自分も庭に下り
何時ものように(習慣化しているのが悲しい)両手にそれぞれザンザスと恭弥を抱えて
縁側に座り込んだのだ


他の者が怒鳴れば・・・・それどころか触ろうとする素振りでもすれば
そりゃあもう、病院にお世話にならなければならない程の怪我を負わされるが
不思議と自分にはそんなことはしないのだ
この二匹は



(それでころかまったく構わずにいると
不機嫌になったり他のものに八つ当りする位なんだよなぁ)



綱吉はそんなことを考えながら
自分の両脇に座り込んでいる猫に目をやった


右側にはすらりと長い手足に尻尾、スタイルも毛並みも綺麗な
つり目の黒毛黒眼の並盛中学校を縄張りにしているらしい猫


左側には手足が長く少々短めの尻尾と大きい体をした
顔に傷のあるこちらも見事な毛並みを持つ黒毛紅眼の猫にしてはイカツイ顔をした猫が

それぞれ綱吉の隣でおとなしくしている



(おとなしくしてればまだ可愛いのに・・・・)



確かに二匹ともありえない位に狂暴なのだが
猫は猫、やはり日向で座り込んでおとなしくしていると可愛らしい


綱吉は二匹の背を撫でながら
ふとある事に気が付いた



「おまえ達、仲悪いくせに此処に来る時ってよく一緒になるよな・・・・」



「もしかして気が合うんじゃないか?」



二匹に向かってそう言えば
ザンザスと恭弥は同時にバッとこちらを振り向き
何時もは切れ長の目を真ん丸にした後
思い切り目を細めて不満が籠もりまくった声で同時に短く鳴いた


素晴らしいハモリ具合

しかしそれを言えば二匹が
それは凄まじい喧嘩を始めるのが予想出来た



「あ〜、ハイハイ違うんだな〜」



綱吉は少々投げ遣りにそう言うと
空を見上げて軽くため息を吐いた












.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ