long.001

□二匹目の銀猫
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(また、一匹増えた)



綱吉はぼんやりと空を見上げて
自分の膝でくつろいでいる銀の毛色の猫の背を撫でた
銀色の毛の猫でも、今自分の膝のうえに居るのは飼い猫のスクアーロではない



彼、を初めて見たのは散歩の途中
連日暑い日が続く中、久々に空が曇り
焦げそうに強い太陽の光が隠れたのでぶらりと街を見てこようかと出かけた時のことだった


前方の塀の上に銀色の固まりを見つけて、最初はスクアーロかと思った


声を掛けようとした時、少し毛色が違うことに気が付いた



(クアーロと同じ銀色だけどスクアーロより白っぽい・・・・)



綱吉は立ち止まり、声を掛けようと開きかけた口を閉じた
すると、あちらも綱吉に気付いたのかこちらを振り替える



(あ・・・・目、あった)



振り向いた猫の首には瞳の色と同じ薄い色の首輪が付いていた



(飼い猫かな?・・・・でもこの辺で見ないし)



綱吉が銀色を眺めながらそんな事を考えていると
塀の上に居た猫がスタッと下に下りてきた
なんだ?、と綱吉がじっと見つめればそいつは暫らくこちらを伺うと
ゆっくりと綱吉に近づいてくる



「にゃあ」



そして一声鳴くと綱吉の足にすりよってきた



(かわいい!!人懐っこい!!)



そして綱吉は猫好きだった
(猫好きでなければ何故か彼のまわりに集まってくる個性派だらけの猫を可愛がったりは出来ないだろう
ましてその内の一匹である何時も睨み付けるような鋭い眼光と
常に威嚇されてるような濁点付きの鳴き声を標準装備している猫を
飼い猫にし、まして可愛いなどとは言えないだろう)


綱吉は擦り寄ってきた猫を抱き上げた



「お前、飼い猫だよな?
この辺で見ないけど、引っ越してきたのか?」



もちろん、猫が返事をするわけが無いことは分かっているが
ついつい話し掛けてしまうのは猫好きの性だろう


抱き上げられても抵抗を見せない猫を撫でていると
綱吉は首輪に書かれた文字を見つけた

『白蘭-Byakuran-』




「びゃく・・らん?
お前白蘭って言うのか」



綱吉が腕の中でおとなしくしている猫に呼び掛けると
白蘭は返事をするように短く鳴くと
ぺろりと綱吉の頬を舐めた

そして一人と一匹は暫らく道で触れ合っていた



久しぶりに普通の猫(綱吉にとっては人間を病院送りにする攻撃力を持っていたり
明らかに猫らしくない行動を起こすものでなければ普通、に入るらしい)と触れ合ったと癒された気分で帰宅した



綱吉は猫好きな人間であったが
猫に好かれやすい人間でもあった
そしてそうやって自分の周りに集まる猫が、一癖どころか五癖も六癖もある奴ばかりと言うことを
綱吉はこの時、綺麗さっぱり忘れていたのだ




自宅の玄関に先程別れたばかりの猫を見つけて綱吉が固まるのは5分後
その猫がいつのまにか家に居ることに違和感を感じなくなるのは初対面から4日後の話だ








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