long.001

□Hold me tight(2)
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自分の叔父だと名乗った男は
そのまま俺を連れ回した

抵抗しようとしたが男は以外と力が強いらしい
決して痛くはなかったが、握られた手は振りほどけそうにはなかった




「で、どうする?」



日か傾きかけて、夕日がだんだんと赤みを増してきた頃
最初に出会った墓地にまた帰ってきた

なぜまた此処に戻るのか、と聞きたかったが止めておいた


(・・・・聞いても無駄な気がした)


男はそれまでのへらへら笑いを引っ込めて
もう一度、今度は墓に向けていた視線をこちらに向けて
もう一度同じ問い掛けをこぼした



「どうする?ザンザス」



最初に会った時に見た、目に痛い程澄んだ空に栄える
空の青とは対照的な暖かい琥珀と淡い色の長い髪
泣きそうな位に綺麗に目に移ったそれは


今では
少し夕日に染まり紅みをまして空に溶けた



「なにが」



本当は分かっていた
でも何故か質問の意図を問う言葉が
するりと音となって発せられた


俺の言葉に男は少し苦笑をこぼすと



「ザンザスは綺麗な紅い目をしているね」



そう言ってふわり、とやわらかく優しく笑んで
ストンと座り込み、俺に目線を合わせて
にこり、と笑った



(違う、だろう)


(そんな言葉じゃないはずだ)


(今、お前が俺に言うのは、別の)


(もっと・・・・)


(・・・・大事、な・・・・)



そんな思考がぐるぐると巡って
ハッと気が付いた



(ああ、ダメだもう)


こいつの事は分かっている
いや、こいつは分かるようにしたのだろう


街の中で向けられた物陰からの強い殺気
ソレが放たれた方を一別したこいつの冷たい目
指先の僅かな合図
自然に動いた数人のガタイの良い男たち
少ししてから止んだ殺気
何時の間にか戻ってきたガタイの良い男たちから僅かに漂ってきた鉄の匂い

身のこなし、隙の無さ、丁寧だが有無を言わせない話し方


十分だ



見せて、分からせて、そして選ばせる気だ

見せるのも分からせるのも強制的だったくせに
最後の最後で決めずに選ばせる



「ザンザス」



そう言って立ち上がった男をザンザスは真っすぐに仰ぎ見た
日は落ちて辺りは薄暗闇



(そうだ自分はまだ子供で、奴は大人だ)


上に上げた分の目線の違いが悔しい


ザンザスの真っすぐにこちらを見た目に
男は満足そうに笑った



「俺と一緒に来る?」



(返事など決まっている)


一度だけ深く頷くと
男は手を差し伸べてきた



「よろしく、ザンザス」



薄く金がかった茶色の髪が
その辺に造られた街頭の光を浴びて
キラキラと光って揺れた









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