long.002

□Hold me tight3(2)
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「で、」



「ん?」



「何でライオンが居るんだ」



いくら行儀良くしていようが、襲い掛かる気配もなかろうが
ベッドの横にいるのは間違いなく
猛獣、に分類されるやつだった



「トゥオーノって言ってね
何時も一緒に寝てるんだ」



「はぁ?!」



いくら飼い馴らしていようが動物だ
突然野性の牙を向けてくるか分からない

第一、どう見てもペットとして愛でるには
あまりにも不釣り合いな動物だ


しかもこちらを警戒してジッと観察すりその目は
ペットより野性のものに近い気がした



「トゥオーノはとても賢いから大丈夫だよ」



男は俺の方を見てそう言うと
片膝をおって身を屈めた



「おいで、トゥオーノ」



あいつがそう言うと、それまでおとなしく座っていたライオンが
腰をあげてゆっくりとこちらに歩み寄ってくる


そいつは男の前まで進むと
手を伸ばせば届きそうな距離で止まった

それまでは俺の方を警戒していたが
男が呼び掛けてからはずっと
トゥオーノの意識が男に向いているのが見て取れた



男がゆっくりと手を伸ばすと
トゥオーノ、と呼ばれたライオンは伸ばされた手に顔を近付ける


咬む気かと思い、おい、と男に声をかけようとしたが
男の顔があまりにも優しげで一瞬息が詰まった

ただただ見ているだけだった俺の前で
トゥオーノは伸ばされた男の手の平に、まるで口付けでも落とすようにそっと触れていた



「ただいま」



男がそういって頭を撫でると
その手に擦り寄るように顔を動かすライオンはまるで猫のようだ



「ザンザス、おいで」



そう言って手招きをしてくる男に無意識に一歩近づいた
ライオンを撫でているのと逆の手が伸びてきて
男にしては細すぎる手が肩に置かれ引き寄せられる



「トゥオーノ、この子はザンザス
新しい家族だよ」



男はふわりと微笑むと俺の頭撫でた



男の言葉を聞いたライオンが
ふっと俺の方に視線を向ける、そして目が合った

しばらく確認するかのようにこちらを見ていたが
また男に視線を戻し、まるで
分かった、とでも言う様にコクリと頷いた

それと同時に、今まで微かに
こちらに向けられていた警戒心が溶けたのが分かる



「ザンザス、トゥオーノも俺の家族だよ」



「・・・・そうか」



今日一日だけで色々と普通ではない男の感覚に疲れ切った頭は
そんな言葉しか浮かばない


心なしか体が重い気がしてため息がもれる



「今日はもう寝ようか」



それを見た男が俺の手を掴みベッドまでひっぱっていく


柔らかいシーツと寝心地のいいベッドの感触に
疲れ切っていた俺は直ぐに意識を手放した



「お休み、ザンザス」



眠りにつく前に優しく名を呼ぶ声と
横に暖かな体温を感じた気がした








次の日の朝
寝起きにライオンの顔のドアップを見て
ザンザスが一瞬固まるのはまた別の話












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