long.002

□赤い蝶に銃痕
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赤 いち ょうに銃痕









真っ黒だった服を着た男が真っ赤な場所に一人立っていた
柔らかそうな色素の薄い髪に揺れるオレンジの炎
ゆらゆらと燻るそれは彼の手にも光って見えた

人はたくさん有るけど、そこに居るのは彼だけだった



視界いっぱいに広がる赤、赤、赤
鮮やかだったソレは所々酸化して赤黒く変色していた
つんとした鉄の匂いはもう感じられない



「・・・・お風呂入りたい」



綱吉はそう呟いて辺りを見回した
見えるのは転がった死体とソレから流れ出る赤と瓦礫や武器
それだけだ


綱吉は手にはめたグローブを外すと
びっとりと血に塗れた手を見て眉を寄せた
何度見ても気分の良いものではない
綱吉には血が好き、などという趣味はない、なるつもりもない
殺し屋などという物騒な職に就いていても
どこの組織にも属していないのはフリーの方が仕事を選べるからだ
(発禁物ホラーの様なスプラッタはあまり好きじゃない)



「全部片付いたし、戻ろう」



先ずはお風呂だ。べたべたするのは嫌だし、鉄臭いのも好きじゃないと
それに何より何だか嫌な予感がする


(こういう時の感は本当に良く当たる
・・・・いっそ外れて欲しいと思うくらいに)



早く戻ろうと、一歩踏み出そうとした時だった

生きている人間の気配を感じた
綱吉が動きを止め、外したグローブを付け直し
勢い良く気配のある方へ振り替える
瞬間に、パァンと銃声が一つ

反射的にグローブで銃弾を弾いた綱吉は自分に銃を発砲した人物を見ると
これでもか、と言わんばかりに嫌そうに顔を歪めた



「またお前かよ」



「久しぶりだな、ツナ」



綱吉の嫌そうな顔とは正反対に男は唇をくっと上げて笑った
黒スーツを着た黒髪黒目の整った顔の男
彼もまた、綱吉と同職の人間だった



「何の用だよ、リボーン」



「分かってるんだろ?」



そう言って近づいてくるリボーンの銃の標準は綱吉にあわせられたまま
綱吉もグローブに炎を灯し、構えている

ピチャ、ピチャと血溜りの中を近寄ってくる男の顔は楽しげで
綱吉はまた気が重くなった気がした



「いい加減俺の物になれよ」



「その言い方止めろよゾッとする」




本気で鳥肌をたてながら
綱吉はリボーンとの距離を保とうと後退りする


(何が悲しくて男に俺の物になれ宣言されなきゃならないんだ!)


(仕事のパートナー探してんなら他あたれ!!!)



目の前の黒服の男(俺も黒服だがお揃いなんて死んでも思いたくない)は
最近しつこく勧誘(?)をしてくるようになった
最初のうちは丁寧にお断わりしていたが、向こうがこっちの話なんて聞いちゃいないのを知ってからは説得は無理だと悟った



「お前の遊びに付き合うほど暇じゃない」



綱吉はそういうと、リボーンに隠しナイフを投げ付けビルの上に飛び上がった
後に残ったのはリボーンが受けとめた三本のナイフと
ビルの上にちらりと見えた彼の炎の色、あたり一面の赤



「遊びじゃないぞ」



ポツリと呟いたリボーンの声は彼に届かない


(さぁ、次は何時会えるだろうか)


彼の物であったナイフに口付けを落とし、リボーンはまた不適に笑った



(嗚呼!あの蝶が欲しくてたまらない!)






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