long.002

□青い涙の暗号
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青い涙のあん ご う






ずっと手を伸ばしているのに今だに届いたためしがない
それほどに遠く、でも諦める事は出来ない







空から降ってきた冷たい雨が地面に小さなシミを作っていく
だんだんと雨音が大きくなり、雨が染み込んだ服はじっとりと肌にまとわり付いて不快な気分にさせた

仕事を終えたばかりのまだ辺りに死体が転がる場所で
骸はぼんやりと彼との出会いを思い出していた
彼と初めて会った時も、こんなふうに雨が降っていた
今でも鮮明に覚えている彼との初対面と現状をダブらせてみる

違うのは彼がこの場に居ないこと
この場に生きているのが自分一人だということ(彼は必要以上の殺しをしなかったから、あのときは倒れている者の中には息のある者も居た)
自分の血に濡れた武器がグローブではないこと
同じなのは雨が降っていることと
あの時の彼も今の自分も、仕事を終えたヒットマンだということ



「ああ、そういえば随分彼に会ってない」



骸はそうこぼすと、一人のヒットマンを思い浮べる
最近はミルフィオーネのボスとの駆け引きや仕事で忙しく、彼に会えていない


(嗚呼、まったく忌々しいあの銀髪め)


骸はギリ、と武器を握りしめた
ミルフィオーネのボス、白蘭とは最近冷戦が続いていた。お互いにお互いが気に入らないのだ
骸は白蘭が綱吉に近づこうとするのが、
白蘭は骸が綱吉に拾われ、今でもたまに綱吉と会っていることが気に食わない
それ以上にお互いがお互いを敵視していた



「綱吉さん、」



止む気配のない雨を見上げ、骸は彼の名前を呼んだ



「綱吉さん」



(会いたい)



望めば彼は会ってくれることは分かっている
けれど自分は彼の庇護をうけ、傍に居ることを選ばなかった

・・・・彼と対等でありたかった


(けれど貴方は遠くて、まだ影さえ掴めない)


彼に近づこうと歩んだ年月は、骸を優秀なヒットマンに仕上げた
けれどまだまだ彼には及ばない、と感じる



「・・・・冷たいですね」



止む気配のない雨が徐々に骸の体温を奪っていく

辺りには血の赤と、血の気を失った青白い肌の死体ばかり
ソレが調度自分の瞳の色と同じように思えた

彼が綺麗だと言ってくれたこの色は
こんなに死臭がするものでは無いだろうに
そう思って真っすぐに空を見上げた
この雨が、色を洗い流してはくれないだろうかと、馬鹿な考えが浮かんだ






瞳から水がこぼれ落ちる
ソレが雨なのか別のモノなのかさえ、もう分からない







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