long.002

□遥か彼方
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「あいつはまだ死ななかったよ」



ドンボンゴレ十代目である男は
重いため息を吐き部屋に置かれたソファに腰掛ける


心持ち機嫌の悪さが滲み出た声

長年連れ添っている死神は
弔いから帰ってきたばかりであるボスが不機嫌な理由に心当たりがあった



「『沢田綱吉』が、か?」


目の前のボンゴレを統べる男、いや自分達が殺した人物の名前をあげる

やはり当たっていたらしく
琥珀色の瞳をスッと細め

ソファに深く座り直すと怠そうに息を吐くと



「あいつがこんなにしぶといのは予想外だよ」



そう言って口の端を持ち上げた

その時何時も綺麗に笑みを浮かべるドンボンゴレ十代目の
苦々し気に歪んだ笑みを見たのはリボーンだけだった



それに醜い優越感が歓喜する


(あぁ、そうだ)



昔、優しく優しく笑う大空のような少年は
十年前に自分達が殺した

けれど目の前で苦痛に耐えるように笑う男も確かに大空だった



「でも俺が選んだのはこっちだ」



二人きりの部屋に、先程の歪な笑みを既に消し
瞳に強い意志をたたえた男は落ち着いた声でそう言った



「ああ」



同意を示した死神がクツリと笑う



「お前が好きにすれば良いんだぞ」



その言葉を聞いたボンゴレは楽しそうに
まるで肉食獣のような笑みを浮かべた



「まだ止まれる気は無いからね」



響いた声に、それはもう決めたことだ、と
堅い決心が滲んでいた気がした











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