long.002

□腰越クライベイビー
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ツナ(ジッリョネロの後継者)
γ(姫を守るファミリー幹部)













あの時はただ何時までも何時までも
この時間が続けばいいと思った
日溜まりの中の様な心地良さと暖かさを与えられて
戸惑いながらそれでもその心地よさを享受していた



(守りきれると信じていた、無くさないと誓ったモノを)







「γ!」



花が綻ぶように笑う
まだ幼いながらジッリョネロを引き継いだ後継者の少女は
金髪の男を見付け、嬉しそうに走り寄った



「どうした?姫」



まだまだ低い位置に在る頭をワシャワシャと撫でてやれば
くすぐったそうに笑う



「ねぇγ、ちょっと屈んで」



真ん丸い琥珀色の目で見上げられれば嫌とは言えなかった



(もともとこの幼い少女に叶う気などしないのだ)



デロデロに甘やかして、暖かい世界で生きてほしい
それが叶わないなら、せめて小さな願い事や我が儘は全て叶えてやりたい



「こうか?」



彼女の目線に会わせて膝を付くと
パサリ、と頭に何かを乗せられた



「?」



「γにあげる!」



何かと思って頭の上のモノを取ってみると
白とピンクの花で編み込まれた可愛らしい花の冠
顔に近づけると、ふわりと花の甘い香りがした



「綺麗だろ?」



そう言って彼女はイタズラが成功した様な顔で笑った

俺みたいないい年したスーツの男が
可愛らしいピンクと白の花の冠をつけている姿はさぞ滑稽だろうし
ファミリーの奴等に見られたら指差されて笑われることは分かっていたが

目の前で笑うツナを見ていると悪い気はしなかった



(むしろこそばゆいような、暖かい気持ちになる)



ファミリーの奴等も最初は笑うだろうが
姫から貰ったと言えば一転して悔しがったり
自分に寄越せと言うだろうことは目に見えていたから



(どうしたって自分達はこの少女が大切で仕方ないんだよな)



冠をポスリとまた頭に納めて
ありがとうな、と頭を撫でれば



「初めて作ったんだ、だからγにって思って」



と笑顔で返ってきた
照れたような笑顔を見て思いっきり抱き締めたい衝動に駆られたが
なんとか思い止まった



「初めて作ったのか」



「幻騎士に教えてもらったんだ」



「・・・・幻騎士に、か?」



「作って見たいって言ったら
作り方を覚えてきてくれたんだ」



無邪気に笑う姫を見て、笑いが込み上げてきた



(あの仏頂面が、花冠!)



腹を抱えて笑いだした俺を
姫は大きな目をさらに真ん丸にして眺めていた
どうしたのだろうか、と首をかしげる姫に
また笑いが込み上げてきた



(嗚呼、結局俺もあいつも)


(この子が大切で大切で愛しくてしょうがないんだろう)



それが今はひどく心地よかった




それはまだ幸せだった頃の

失わないと、守りきれると信じていた日常














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