long.002

□稲村ヶ崎ジェーン
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沢田綱吉(初代剣帝/23)
スクアーロ(入隊前/13)











奴と俺は何処までも正反対だった
だから惹かれた
俺の中に、強烈に、鮮明に、色濃く残るアイツの存在感を
消そうと躍起になるたびに
消そうとするその反面、それ以上にあいつを追いかけている真実には目を瞑ったまま









「スクアーロ」



男にしては高い、女にしては少しだけ低いような声に呼ばれて振り替える
声の先には真っ黒な、ヴァリアーの隊服を着込んだ男が居た

自分より遥かに年上の筈の男はその童顔と高い声で少年の様にも
うっすらと浮かべられた感情の見えない表情や
顔に似つかわしくない威圧感から老人のような狡猾ささえ見え隠れする
不思議な男だった



「なんだぁ」



そっけなく返しても張り付いたような穏やかな笑みを崩さずに
男はまた一歩スクアーロとの距離を詰める



「相変わらずだなぁ」



困った様に笑う綱吉にスクアーロは眉間のシワを深め、不機嫌を露にした



(気にくわない、気にくわない、気にくわない)



(ヘラヘラしやがって!)



「近づくんじゃねぇ!」



スクアーロが殺気を放っても睨んでも
綱吉は笑みを崩さずに距離をつめる
それがさらに気にくわなかった



(だってその表情は子供をいさめる時の大人のソレだ)



綱吉にとってギリギリの間合い、そこで彼は何時も歩みを止める



「ああ、良い眼をするようになった
それに・・・・髪が伸びたね」



一瞬スッと細められた目に動きを止めると
彼の白い指がスクアーロの少し長い髪をといた



「綺麗な髪だ」



サラサラと指通りの良い髪をなで、彼は満足げに言った



「まっすぐで、サラサラで、綺麗な銀色・・・・俺の髪とは正反対だ」



「っ放せ!」



綱吉が言い終わる直前、スクアーロが綱吉の手を弾いた
思い切り目の前の男を睨み付けると
足早にその場から走り去った



「畜生っ・・・」



(正反対?ふざけやがって)



そんなことは一番自分が解っている


フワフワした金茶色の髪
落ち着いた、澄んだ高い声
柔らかい雰囲気に気質
剣帝と呼ばれ、ヴァリアーのボスという実力

何もかも俺とは違う



(胸糞悪い)



奴と俺は何処までも正反対だった
だから惹かれた



(認めたくなんて無かった、惹かれていることなんて)



俺の中に、強烈に、鮮明に、色濃く残るアイツの存在感を
消そうと躍起になるたびに思い知らされた


(離れた歳が恨めしかった
何時まで経ってもあいつにとって俺はガキのままだ)



消そうとするその反面
それ以上にあいつを追いかけている真実に
クラクラと目眩がした












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