ちすざくの部屋

□‡旅立ちのうた‡A
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寒いのに弱かったか?
そう言えば…ん?
オレの記憶の中の那岐は…寒い時どこに居た?



…無理してオレのために…出前試験受けてくれて…
ふーっ!
「那岐?」
ストレートの髪を手ぐしで撫でてみる。

そう言えばオレ…那岐の髪触るの初めてだった?
わっ!照れる…

ん?
髪触ってるの?遠夜…何か落ち着く?変な僕。
こんなに寒いと動けなくなる…ずっと前から体も頭も心まで前に進まない。
「那岐?」
さっきから僕を何度も呼んでくれているのに…返事出来る気がしない?力が湧いてこない?
「那岐…」
遠夜の声が遠ざかっていくみたいでぷるっと震えた。ん?
寒いのか?
オレは急いで毛布を一枚…被せる。
「…すまない」
髪撫でてる場合じゃなかったのに…ぐーっ!静まれオレの腹…こんな時に格好悪い…
ふふっ!

え?
那岐…起きたのか?
何も食べずに眠り続けてたから…
パタパタと遠夜が下に降りていく音がした。


ふーっ!
「那岐…夜食一緒に食べよう!」
小さな椀に湯気が上がっていた。
「ちょっと熱いから」
ふーふー?
僕の椀に遠夜が息を吹き掛けて冷ましてくれてる?

「那岐の好きなそうめん…あっためてみた」
ああ…
遠夜が背中を撫でて起き上がらせてくれる。
んーっ!
僕もお腹空いてるみたい?「ふーふーいい香り?」
ああ…柚子の香りだね!
僕の好きな香り。

「体あったまる」
オレも那岐の横でふーふーしながら食べる。

「遠夜が居るから僕は餓死しないで済みそう」
えーー?
那岐…一人で餓死してたのか?
ふふっ!
「まだしてないよ!」
餓死したら遠夜に逢えないところだった…

ははは…オレ、今変な事言ったか?
遠夜がいつもより明るくて僕を気遣ってくれるのが嬉しい…ホントは一人で居なきゃいけなかったのに…ふうっ!
いつまでもこんな日が続くと良いな…

「那岐…オレ那岐には」
元気にって言うつもりだったけど…止めた。また無理しそうだったから…オレが那岐の具合を悪くしているような気になって悲しくなった。

「僕は前から寒い時は弱かったんだよ!」
この際はっきり言わないと誤解しそうだったから。

そっか…だから寒い時の那岐を覚えていなかったんだな…
「遠夜…あったまったよ」
那岐がにっこり笑ったらオレまでポカポカしてきた。良かった…

ふにゃってなって那岐にもたれかかる。
「とーや?」
うん?
お子さま仕様はオレの番になったらしい。


2010.03.27.
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