臆病者と科学な魔術庫
□異種族
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当たり前だけど。
歩いても、歩いても。
森。
おまけに、当たり前だけど、手入れもされていなくかなり暗い。あたしはゴーグルをしているから平気だけど、グレイは視界が悪いせいか何度か木の根に躓いている。鈍くさい奴。
この根も厄介で、太いものがいくつも地面から突き出している。しかも、どこも湿っていて、苔で滑りやすい。
正直、自分がどっちに向かって歩いてるのかすらわからない状況だ。
「あの、リィル。」
「うるさい。黙れ。」
「まだオレ何も言ってないんですけど……」
日が傾いてきたのか、森にさす薄明かりが橙色になっている。
「なあ、ホントに森を突っ切った方が早いのか?」
「…………距離の話なら。」
「時間の話なら?」
「………………あんまり、喋ってると余計に疲れるわよ。」
人が気にしないようにしていたことをこの馬鹿はずけずけと……
「いやでも、話しかけたら返事が返ってくるっていいな、って思ってさ。」
クルリ、とあたしは向きを180度かえてグレイの方を見る。
。