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□■浜泉連載■
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■第1幕〜日常編〜■
1話:ツンデレかそうでないかは別問題として


有り得ない。
ほんとマジで笑えないレベルってヤツなんだけど、
ほらあれだ、憧れのセンパイとか…そういうのって居たりとかするだろ?
でもそのセンパイがさ、なんと高校入ったら同じクラスになってたんだよ…。
入学式で鉢合わせしたときなんてもう、頭ブっ飛ぶかと思ったし。
にこやかに挨拶なんかされちゃあ、更にワケ判んなくなったりして逆に何も云えないじゃん…

つかマジ有り得ねー
中学のセンパイが、高校で同クラスだなんて……ほんとマジで、バッカじゃねーの!?







そのバカな浜田とやらは、何だかんだ云って小学生時代からの付き合いだ。
その頃はただ近所の兄ちゃんってカンジだったんだけど、中学でJrチームが同じになって…しかも浜田はそこのエースだったんだ。
…云っとくけど、もう"エース"って次元じゃねえぞ!あいつが球投げる度に「きゃー」っての太い球児の声が飛ぶし、試合には男女問わずに追っかけが駆け付ける。
勿論近所だから中学も同じで、バレンタインの日にあいつの靴箱の蓋がブッ壊れた話は即日中に俺のクラスにも届いたくらいだ。
誤解しないで欲しいんだけど、浜田ってどう見ても美男子じゃないぜ。
どっちかっていうとバカなイメージだし、実際本当にバカだ。
でもこいつには何か人を惹き付けるもんがあって、性格とか雰囲気とかで好かれてるタイプなのかもしれない。
(美男子じゃないけど、まあ顔は悪くない…と思う)

まあとにかく云いたいのは、今じゃ絶対口には出さないけど、あいつはすげぇ憧れのセンパイだったわけだ。
それなのに…そいつは今俺の前で身体を小さくさせて、おまけに両手を合わせている。





「泉!さっきの古典のノート見せてくれー」
昼休み、黙々と弁当箱を開きながらそれを聞き流すと、それでもめげずに浜田は云い寄ってきた。
「泉ー」
「やだね」
「…即答ッ!?」
「どーせ寝てたんだろ。自業自得じゃん」
「いず み、くん!」
弁当を持ってとてとて小走りにやってきた三橋が、何か云いたそうに口をぱくぱくさせる。
「うう…泉ヒドいー」
「ん、どーした三橋」
「あ、あの ねっ」
浜田は置いといて三橋に向き直ると、案の定キョドりまくっていた。
「…あ、の……」
「うん」
「オレ…さっきの…ぅ、」
「……?」
「授業中頑張ったけど抜けちゃった訳のとこ、見せて欲しいんだってさ!」
いつの間にか早弁のせいで購買に行っていた田島が、パンの袋をぶらぶらさせながら三橋に飛び付く。
「だよなー?三橋」
「う、うん!」
三橋翻訳者その一(二は栄口)のこいつは、意味不明なやり取りからさらりと内容を理解してしまった。
……まあ、そんな神懸かった現象にも慣れたけどさ、俺も多分浜田も。
「なんだそーだったのか。……ほら三橋、返すのは次の古典まででいーぜ」
机から取り出した古文ノートを渡すと、三橋は「あ、ぁり、ありがと」としどろもどろになりながら ぺこんと頭を下げる。
「なになになにそれ!ミハシはオッケーで俺はダメなわけ!?どんな差別だよー」
「三橋は頑張った、でもお前は寝てた。その違いだな」
「ううぅ…」
ふいっと顔を背けると、浜田はヘタレた顔をしてしゅんとしてしまう。ま、世の中そんなに甘くないってことだ!
「泉ってば浜田オンリーでキチクだよなー。ゲンミツに容赦ないぞ!ノートくらい貸してやりゃあいーじゃん?」
「い ずみくん、ハマちゃん…ダメなら、オレも…」
三橋がおろおろと涙ぐみ始める。…こいつを泣かしたらちょっとヤバイ。
くだらねーことで泣かして阿部に絡まれたくねえし…俺が浜田に当たるのはほら、ぶっちゃけ気分だしな。
「ちなみにオレにも見せてくんね?起きてたけど、ぜんっぜん判んなくて何も書いてねー!」
……田島、バカだな。
テスト前になって花井に絞られまくるだろ、多分。




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