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□■水谷文貴物語■
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1話:登校初日は波乱の予感


俺、水谷文貴。西浦高校1年野球部で、クソレフトやってます!

俺の中学野球部時代はそれなりに楽しかったけど、ゆるーい感じの雰囲気であんまやる気とかはなかったんだ。
皆で仲良くキャッチボールしたり、わいわい試合やったり、大会でも初戦敗退連続で、その後の反省会打ち上げの方が色々と盛り上がったりしていた。

そんなもんだからこの西浦高校に入ったとき、硬式野球部が新設されるって聞いて嬉しかった。
1年だけで楽しく野球出来るだろうな〜とか、簡単にレギュラーになれそうだなんて思っていたわけさ。何て甘いオレ。


入学して最初にクラスの自己紹介で名前と入ろうと思ってる部活動を云うヤツがあったんだけど、野球部希望はどれだけ居るかな〜って内心わくわくしてたんだ。
そしたら出席番号1番の目付きが悪いヤツが悠々と立ち上がって
「シニアで捕手やってたんで、野球部に入ろうと思います」
と堂々と云い放ったわけよ。
…ちょっと皆さん聞いた?シニアだってシニア。
あれだよね、クラブチームみたいなの。硬式使ってやる本格的な野球だよ。
1番からこれかよ〜って正直ヘコたれてたんだけど、その後なかなか野球部希望者は出てこなかった。
……ヤバイよ!クラスで同じ部活とかになったらさ、やっぱり交流とか重要じゃん?オレあの目付きが悪いシニアとは上手くやっていける自信ないってー
……せめて後二人…いや一人でいいから誰か野球部入ってえ!

一人席で悶絶していたら、その願いを叶えるかのようにオレの数席前のデカいヤツが
「中学軟式上がりっスけど、一応主将やってたんで野球部見にいこうと思ってます」
と云い放った。
…でも……デケぇ!背ェ高っ。
しかも坊主…こわいいぃ…っ
本気で涙目になりそうなオレを余所に、1番シニアと長身坊主がアイコンタクトを取っていた。
気の強そうなシニア男は、坊主の身長とか体格とか、主将やってた人望や経験を総合評価してなかなか満足そうにしている。
二人は「よろしく」と目配せし合っていた。


「んじゃ次ー」
やべっ、もうオレの番じゃん!
「水谷文貴です〜。中学で野球やってて、新設野球部入ろうと思ってますーよろしく♪」
最後にちょっとフザけると、クラスに笑いが起こる。………が、
(ひいいいいいぃぃっ)
…睨んでる!シニア男が振り返ってオレをめっちゃ睨んでるよ!
瞳孔開いてるし何アレマジで怖いんですけどー………


一人ブルブル震えていたら、残りの自己紹介なんてあっという間に終わってしまった。
無情にもチャイムが鳴り響いて、恐怖の休み時間に突入する。



「おい」
オレはすぐにさっきの二人に机ごと取り囲まれてしまう。
……シニア、目付き悪い…坊主、怖いよお〜
「…あ、こんにちは」
…何ヘコたれてんだ文貴!男だろ!ついてんだろ!?
元から友達は多いし作るのも上手いと自負している。
男を見せちゃうぜマジでオレってば!

「お前中学で野球部?それとも何かチームに入ってた?」
「おいおい阿部…最初から不躾だろ」
「あーオレ、中学野球部だよ。チームとかそういうのには入ってない」
それを聞いてシニア阿部は やっぱりという表情をした。
「…だろーな」
「え、阿部何で判るんだ?」
「俺こいつ知らないし。シニアとボーイズリーグの奴は、一応控えまで頭に入れてっから」
逆にこいつがチーム出身者だったら、ベンチにも入れない戦力外ってことになるから逆にそっちの方が困る と阿部は容赦なく辛口発言をブッ放す。



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