Short dream ツバサ
□お鍋
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この国はとても寒くてリビング、つまり居間にはこたつというものが置いてあった。
「あったかいねー。」
イオンはこたつ布団に潜り込んでいる。
「こうゆうものが異世界にはあるんだー。」
ちょうど目の前に座っているのは小狼。左右にはサクラと黒鋼が座っている。
「準備出来たよー。」
ファイが肩にモコナを乗せ台所から鍋つかみを両手にはめ、鍋と切った野菜類を運んできた。
「モコナのゆうとおりにしたよー。」
「やっぱり寒い日はみんなでお鍋だよね!昔、侑子と食べたの!」
モコナはぴょんっとこたつ机の上に飛び乗る。
「ちょっと寄ってくれるー?」
こたつは4面しかないのでイオンは少しサクラ側に積め、その間にファイが入りこむ。
「はい、こっからはお父さんの仕事ー。」
ファイはそう言うと黒鋼に菜箸を渡した。
「なんで俺が!」
「オレ達、鍋知らないもーん。」
ファイはへらっと笑う。
イオンもファイも小狼もサクラも鍋という食べ物を知らない。この世界でモコナがこたつを見つけ出し、「お鍋がしたい!」と言い出した。
その話を唯一、理解したのが黒鋼だった。彼の世界には存在したものらしい。
「普段しないんだからしてよ。」
イオンもファイのように黒鋼にへらっと笑った。
「おまえもしないだろうが!」
「片づけしてるもーん。」
文句を言いながらも黒鋼は菜箸を手に取った。
「おまえ等手だすんじゃねぇ!」
「まだそれは煮えてねぇんだよ!」
「ほら、小僧も姫も白饅頭も皿をかせ!」
「黒鋼って鍋奉行なんだねー。」
モコナがぼそりと呟いた。
「お鍋ってみんなで楽しく、つついて食べるもんだってモコナ言ってなかった?」
小狼とサクラは黒鋼の変貌ぶりに戸惑い、おいしく食べれているのかは皆無。モコナはその様子に少し楽しそうだ。
「もぅファイが台所で煮たのもってきてくれたらよかったのにー。」
「オレのせいー?」
みんなが好きなように材料を入れたり食べたりするとイライラしちゃう鍋奉行な黒鋼でした。