BoOk
□僕の物。
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僕は失うのが怖くて何も自分の物にできないだけ。
本当は───…
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「ね…神田…こっち…、見てよ」
「やっ…ぁ…」
粘着質な音を奏でながら奥へ深く貫く。
神田からはあまい鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。
「君はッ…いつになったら…僕の物になるの…?」
ポタリ、と神田の頬に涙を流す。
神田はそれに驚いたかのように僕を見つめる。
「なに、が…」
「だから…君はいつになったら僕の物になるの?って言ったの…、」
「急になんなんだよ…っ」
もじもじと焦らされるのが嫌、と言わんばかりに体を震わせる。
まるで「はやく」と言っているように。
「ごめんなさい…こんな時に、でも…君の口から聞きたい」
「ぁっ…」
くちゅ、っと少しだけ腰を動かすと神田は足らない、とばかりに自分から動かしていく。
「ん…ぁ…、」
君と僕はしょせん体だけの関係?
ちがう、僕が求めているのは─…
「お前は…そう思ってなかったのか…」
「え?」
ただ流れる涙がとまらず頬を伝う。
「いま…なんて…」
バシンッ─…、
おもいっきり神田が僕の頬を叩く。
目の前がキラキラとして頭がズキズキと痛む。
「いっ!!…痛」
「……なんで…そんなにわからねぇのか…?」
神田からもポタリと涙が流れる。
「神田…?」
「俺が…っお前の事嫌いだと思ってたのかよ!!」
僕が勘違いしていただけだった─…。
神田は僕の事、愛してくれていたのに僕がわからなかっただけ…?
じゃあさっきの言葉は最低じゃないか…。
「ごめん…神田…僕も君の事愛してる…」
マナが死んでから僕は自分の物がわからなくなっているかもしれない。
また、失ってしまうのではないのか、と怯えて自分がそれを拒絶していただけだったのかもしれない…。
「愛し…てっ…ます、神田…」
「子供か…お前は─…」
頭を優しく撫でて涙の溜まった顔で微笑んでくれた。
もう、涙と鼻水が止まらない。
まるで、子供のように神田の胸で泣いた。
「ねぇ…っ」
「あ?」
「君は消えないよね─…」
「…あたりめぇだ」
マナを失ってからずっと持っていなかった自分の物。
でも、今日…はじめて自分の物になってくれた人がいます。
その人を大切にしたいと思います…。
「ありがと…神田」
僕の物。
(大切にするよ)
(永遠に愛し続ける)
END