拍手御礼小説

□拍手文1〜環とテツのある1日〜
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ワワン!

庭ではしゃいでいた十四郎が、俺の持つホースの水目がけて突っ込んできた。

「わわっ!」

「ワンッ!」

歌壇の花にいくはずだった水は、勢いよく十四郎にかかる。

「びしょ濡れじゃねえかよ」

濡れ濡れになった十四郎は、気にせず元気一杯庭を走り回る。

「お前は元気だな〜」

この夏から続く猛暑に、俺だけでなく城智寮のメンバーのほとんどがダウンしているのに、そんなのお構いなしに十四郎はもっと構ってくれとばかりに尻尾を振って走り回る。

夏休みも終わり、秋に大きな大会を控えている柔道部は新たな練習メニューを追加し、まさに朝から晩まで柔道尽くしの毎日。いつもなら少しは涼しくなっているはずなのに、このところ連続して続く猛暑に、俺は若干、バテ気味だった。

「お前は暑くないのか? ああ〜、犬になりてえ〜」

ふと、そんな事をぼそりと口にしてみれば。




「先輩が犬…」

「うお! ビックリした! いきなり真後ろに立つなよな、テツ!」


頭上から聞こえた声に、俺は慌てて振り返った。

「犬の先輩…………いい」

「テツ!」

何を想像しているのやら、テツがニヤリと口元を歪めているのが見え、俺の背筋に冷たいものが走る。

「四つん這い …首輪して…くわえさせて…鳴かせて」

「聞こえなかったぞ! 俺は何一つ、聞いてなんかいないからな!!」

恐ろしい単語が可愛い後輩の口から発せられた気がしたが、俺の耳は今日は日曜日。何も聞こえてなんかいない!!

「…先輩、何で水やりしてんだ?」

「ん? ああ、この暑さだろ? 十三郎さんも大変だろうからちょっとでも手伝おうと思ってな」

寮の管理人の十三郎さんは、パソコンを操り単車にも跨がるスーパーじいさんだが、80歳も近く、この暑さでは何かと大変かと思い、手伝いをかって出たわけだ。

「俺も手伝う」

「え、いいよ。練習上がりだろ? 先に風呂入ってこいって」

俺は30分早く練習を上がらせて貰ったから私服だが、テツは帰ってきた姿のままだ。汗をかいたままの制服はキツイだろう。

「先輩、貸して」

「え、おい!」

俺の言葉を聞いてなかったのか、テツはいきなり荷物を放り出して制服を脱ぎ出した。

「ちょ、テ、テツ」

見る間にボクサーパンツ一枚になったテツは、呆然とする俺からホースを奪うと……

「テツ!」

そのままホースの水を頭からぶっかけた。


水もしたたるいい男とは、こいつの事なのかもしれん。

濡れた黒髪が筋肉の張った首筋に張り付き、何とも言えない男の色気を醸し出している。

無駄な肉1つない鍛え上げられた肉体は、堂々とした大人の男の身体にしか見えなかった。


俺より年下なのに…!


「そんなに見つめられたら、穴が開くかも」

「開かねえよ!」

見事な身体に見とれていた俺は、慌ててテツからホースを奪おうと手を伸ばした。

「貸せ!」

「ワワン!!」

「あ」

…俺の手に戻ってくるはずだったホースは、遊んで〜と飛びかかってきた十四郎の身体に跳ね返り……………俺の全身に直撃した。

「ぶふぅっ!!」

「先輩!」

しかも十四郎はちゃっかりホースを踏んでくれちゃったりしたから、さらなる水圧が俺を襲った。

「ワン、ワワン!」

「先輩…」

テツが蛇口を捻って水を止めてくれたお陰で水圧からは逃れられたが、見事なまでにびしょ濡れになった俺。
ああ、濡れたTシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。

「………先輩、ヤバイ」

「ん?」

今度はなぜかテツが俺の身体を穴が開く程凝視してきて、俺は若干、顔を引き攣らせた。

「………してえ」

「ん、え?」

「先輩、風呂行こうか」

「お、おい」

「今すぐ行こう。早く」

「ちょ、ちょっと待てよ。まだ…」

「水やりは十四郎に任せとけばいい。………じゃないと、俺が我慢できねえ」

「十四郎に任せられるわけないだろ! おい、テ」

テツ、と続くはずだった言葉は、奴のキスにかき消される。

「テツ!」

「あんたが見惚れたこの身体は、全部あんたのもんだ」

「〜!!」

「今からそれを分からせてやるよ」

「!!」

それはつまり、今からほにゃららをしに行くという事か?! しに行くと言うか、されるのは俺じゃねえかよ!





その後、欲情したテツに風呂場に連れ込まれてほにゃららな事を目一杯された俺。
スッキリした顔で俺の身体を綺麗に清めていく奴を見て、「犬はお前の方だ」と強く思った。


「犬の躾の本、買いに行こう…」






お粗末様でしたm(__)m
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