拍手御礼小説

□拍手文6〜直人×春也〜
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『PINKクローバー』から、直人×春也をどうぞ……



ふと、目が覚めた。
辺りはうっすらと明るくて、もう朝だという事が分かった。

「…あ、いてて…」

むくりと起き上がってみたけど、あらぬ場所が鈍く痛み、顔をしかめる。
普通なら絶対に痛まない場所に感じる、あまり口には出来ない違和感。

「………」

ゆうべの出来事を思い出し、一気に顔に熱が上がってくる。

「……お、思い出しちゃダメだ…」

何とか頭の中に浮かんだあれやこれやを追い出し、そっとベッドから出ようとしたけど…

「…っ」

腰に回った腕が、それを阻んだ。
振り返れば、寝ていても嫌味なくらいに整った顔立ちの、僕の……彼氏。

「…ほんと、好き勝手してくてれちゃって」

その寝顔は満足し切った肉食獸のようで、幸せに溢れているように見えた。

けどまあ、こうして2人で過ごすのも久しぶりなので、文句も言えない。
だって、僕だって直人君と過ごせるのが嬉しくてまあその、色々と…したわけで……

「ああぁ〜。ダ、ダメだ。思い出すな、僕」

ぶんぶんと頭を振り、蘇ったゆうべの記憶を再びはねのける。


僕の彼氏はバーテンダーをしている。所謂、夜のお仕事。
僕はというと、病院に勤務する理学療法士。訓練の先生だ。

休みがなかなか合わないので、一緒に過ごすのも至難の技だ。
それでも、彼はこまめにスケジュールを調整しては僕との時間を作ってくれる。

歳は僕より4つも下なのに、頼れるお兄さんみたいな感じ。


「…でも、僕だって頼られたいんだ」

ぐっと拳に力を入れ、決意を新たに直人君の腕をそっと離す。

「…待っててね、直人君」

ちゅ、と鼻の上に小さなキスを落とし、僕は目的の場所へと向かう。



「えっと、卵はこんなもんでいいのかな…?」

混ぜ混ぜ…

「牛乳は、こんなもんかな?」

ドバッー

「フライパンに油を入れて、と…」

ジュジュー




30分後。


「………何してんだ?」

「わ! 直人君…その、お、おはよ。早いね」

「……春也、フライパンから煙出てるぞ」

「え? わ、大変だ! あちっ!」

「! ほら、手ぇ貸せ」

熱したフライパンから離した手を、直人君はすぐに水道の蛇口の下に持ってきて、流水で冷やしてくれた。

「あ、ありがと…」

「ったく。何やってんだよ。そんなに腹が減ってたのか? 起こしてくれりゃ、俺が作ったのに」

「それじゃダメなんだ! ……あ、その、たまには僕が料理を作ってあげようかなあ〜と…」

「……春也」

「……けど、やっぱり僕は鈍臭いからダメだった」

へへ、と苦笑いをし、真っ黒に焦げたホットケーキの成れの果てを見つめる。

「……………は〜」

「…あ、呆れた?」

すぐ後ろに立つ直人君を見上げ、僕は恐る恐る尋ねた。


僕は何をやらしても要領が悪く、仕事でも失敗ばかりやらかしている。
それは日常生活の中での料理や掃除でもそうで、「もうお前は何もするな」と直人君には宣告されていた。

「ごめんね」

黙ったままの直人君を見上げ、僕は素直に謝る。

「っ! あ〜、もう!」

「え?!」

何が? と問う前に降りてきたキスに唇を奪われ、僕は真上を向いたままドンドンと直人君の厚い胸板を叩いた。

身長差があるから仕方ないんだけど、真上を向いたままのキスは首が酷く疲れるんだ。

「んんぅ〜っ」

思う存分口内を暴れ回った直人君の舌が離れた時にはもう、僕は腰砕け。

「春也」

「ん?」

「一緒に住もう」

「えええ?」

まさかそんな事を言われるとは思っていなかったので、僕はビックリして動けなくなった。

「こんな可愛い事されて、黙ってられるか。いいか、これはもう決定事項だ」

「え、そ、ちょっ…」

「春也。いいだろ?」

真剣な、でもどこか僕の答えを恐れているような目の直人君に、返す言葉は1つしかなかった。




「末永く、お願いします」


終わり

2010.11.30〜12.21

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