拍手御礼小説
□拍手文4〜明仁×奏〜
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『15センチ先の恋』の明仁×奏の1日をどうぞ……
↓
「だ〜! やっとテスト終わったぜ〜」
「帰りにカラオケ行く奴〜!」
「行く行く〜!」
「あ、わたしも行くっ」
地獄の中間テストがやっと終わった。
俺はテストが大嫌いだ。
テストが好きな高校生なんて、数える程しかいないだろうけど。
「おい、奏もテストの打ち上げ行こうぜ」
「いや。やめとく」
俺は親友の七海の誘いをさらりと断った。
「何だよ、付き合い悪いな。今日はどこのスーパーの特売日だよ?」
「今日は先約があるんだ。ちなみに特売は毎週火曜、つまり明日だ」
「お前ね…」
拗ねたように口を尖らす七海は、呆れたようにお前は主婦か、と続けた。
海外で働く父親に、夜勤のある仕事をしている母親、育ちざかりの弟と妹。兄は多忙なサラリーマン。
俺が家事をしないで、誰がやる?
「先約って誰とだよ?」
「……別にいいだろ」
「気になるな〜。誰だよ?」
「…誰だっていいだろ」
やけにつっかかってくる七海をかわしながら、俺は荷物を詰めたカバンを手に席を立った。
「じゃあな、帰」
「奏君!!」
七海への別れの挨拶は、大きな声によって遮られた。
「………んだよ、関目」
空気読めよな。
俺、早く帰りたいんだけど…。急いでたりするんだけど。
「この後、わたしと一緒に帰らない?」
「はあ?」
関目は、俺に物おじする事なく声をかけてくるクラスの女子だ。
自分の事をか弱い乙女だと言っているが、ソフトボールで鍛えた黄金の右腕が繰り出すパンチの殺傷能力はすさまじい。
「…気持ち悪いな。何企んでる?」
「失礼ね。ただ、友達の少ない奏君とたまには一緒に帰ってあげようかなと」
「おい。校門の所にいるの、奏の兄貴じゃないか?」
「!!」
グランドを見ていた七海のその言葉を聞き、俺は慌てて携帯を開いた。
「わ、明仁からメール来てるし」
新着メールが1件。
『早く仕事が終わったから、学校まで迎えに行くな』
「先約って、明仁さんか」
「そ。買い物行くんだ」
「デートか」
「! 買い物だよ」
七海の言葉にドキリとしながらもそこんとこはちゃんと訂正し、俺は今度こそ2人に別れを告げた。
「関目、七海と一緒に帰ってやれよ。こいつ最近、失恋したばっかで淋しいみたいだから」
「奏!」
「じゃ〜な!」
大きく手を振って、俺は大好きな明仁が待つグランドへと急ぐ。
残された2人が何を呟いていたのかも知らず。
「………お前、明仁さんがいたの知ってて言っただろ?」
「当然」
「…バスケ部の大宮先輩を追いかけてたんじゃなかったのかよ」
「大宮先輩は彼氏候補。明仁さんは目の保養。イケメンは何人いても、邪魔にならないの〜♪」
「見てるだけならいいけど…明仁さんはやめとけって」
「何でよ」
「……あの人、好きな人いるぜ?」
「嘘! 誰よ?!」
「……お前も知ってる奴」
「ええ?!………まさか、わたし?」
「……………お前って、すげえな」
お粗末様でしたm(__)m
2010.10.25